最果タヒさんが語る「『詩』のイメージを変えたい理由」「何度も読み返したい漫画」
BLANKEY JET CITY・浅井健一さんの歌詞との出会いが人生の転機に
詩と出会う前、最果さんが一番好きだったのは音楽でした。中学生になると周りではファッションが好きだったり、アイドルにはまったりとそれぞれが好きなものが定まってくる中、ピンと来るものがありませんでした。そんな中で出合ったのがロックです。「これは私が好きなものだ!」と確信。とりわけBLANKEY JET CITYと出会ったことが人生の転機になったと言います。 「ブランキーの浅井健一さんの歌詞がとても好きなんです。文章って、文脈とか流れがあるのですが、歌詞だとそれがなくて突然飛ぶんですよね。浅井さんの歌詞はその飛び方が本当にかっこよくて、言葉そのものがすごく新鮮に魅力的に見えました。知っている言葉を見たことない使い方をしたり、言葉の印象や距離感が読んだ瞬間に一気に更新されていく。それがすごく面白いなと思って、言葉を書くことってかっこいいなぁと思うようになったんです。それまで、コミュニケーションも苦手だし言葉を前向きに捉えることができなかったけど、それから言葉を書いてみよう、自分で自由に書いてそれを作品としてみようと思うようになりました」
2014年に出版した詩集『死んでしまう系のぼくらに』、2016年の『夜空はいつでも最高密度の青色だ』、2017年の『愛の縫い目はここ』(全てリトルモア)は、新時代を描く詩集3部作として今でも人気を集めています。2017年には『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が映画化。その時にお願いしたのは、「詩の内容を補足するようなものにしないで欲しい」でした。 「詩が原作ではあるものの、別の作品に生まれ変わる感覚だったのですごく楽しみだったし、実際にすごく好きな映画になったのは嬉しいです。映画では、私の作品のまわりにある私が知らなかった世界が描かれています。それこそ詩集を出す、本を出すという行為は、出版されたその冊数分いろいろな人生に溶け込んだ、私の知らない読者の生活の物語があると思うんですけど、そういうものの一つが映画になった感覚があります」