なでしこJはなぜ英国に敗れグループリーグ敗退の危機に追い込まれたのか…モチベーターになれなかった指揮官
カナダ戦の再現を託された岩渕も、放ったシュートはゼロに終わった。というよりも、岩渕がピッチに入った後もチャンスすら作れずに試合終了を迎えた。キャプテンのDF熊谷紗希(バイエルン・ミュンヘン)は「正直、最低でも勝ち点1を取りたかった」と悔しさが入り混じった本音を漏らしながらも、必死に前を向いた。 「これで終わりじゃないので、次へ向けていい準備をしたい。次は勝たなければいけないので、チームとしてスコアにつながるプレーをどんどん出していきたい」 参加12ヵ国が3グループに分かれてグループリーグを戦う女子サッカーは、各グループの上位2位と3位のなかで成績上位の2ヵ国が準々決勝へ進む。イギリスに敗れた時点で1位突破が消滅したものの、なでしこは27日のチリ戦に勝てば無条件でグループリーグ突破が決まり、なおかつイギリス対カナダの結果次第では2位突破もありうる。 一転して引き分けならば、グループFの結果次第となる。具体的には中国と対戦するオランダ、ザンビアと対戦するブラジルがともに引き分け以上ならば3位での突破が決まる。グループFの力関係を考えれば、こちらも可能性が高いだろう。 しかし、チリに負ければその時点で東京五輪からの敗退が決まる。最新のFIFA女子ランキングで10位のなでしこに対して、イギリス、カナダに連敗しているチリは37位。力関係から「チリから勝ち点3を取ることは十分に可能」と予想する鈴木氏は、同時にカギを握る存在となる岩渕の先発復帰は難しいのではないかと危惧する。 「ゴールを奪えるかどうかは、現状の攻撃陣では岩渕頼みになる。けがの詳しい状態はわからないが、リードされるまで使わなかったイギリス戦の起用法を見る限りでは、いくら岩渕本人が出たいと志願したとしても、私が監督の立場ならば先発では使わない」 イギリス戦の前後半でまったく別の顔を見せた不安定感。自力突破には勝利が必須となる重圧。頼れる「10番」が利き足の右ひざに故障を抱えている不安。有観客で開催され、ファンの存在が後押ししてくれる宮城スタジアムでなでしこを待つ、天国と地獄とを分け隔てるグループリーグ最終戦は27日午後8時にキックオフを迎える。 (文責・藤江直人/スポーツライター)