なでしこJはなぜ英国に敗れグループリーグ敗退の危機に追い込まれたのか…モチベーターになれなかった指揮官
通算成績で1勝2分け5敗と圧倒され、しかも高倉体制下では3連敗と一度も勝っていない難敵イングランド女子代表を中心に構成されるイギリスと前半を0-0で終えた。迎えたハーフタイム。ロッカールームへ戻り、ベンチに腰かけた瞬間に途切れがちになる緊張感を持続させるのは、監督に求められる重要な仕事のひとつだと鈴木氏は指摘する。 「格上の相手に奮闘してきた選手たちの士気を、さらに高めるような雰囲気を監督は作らなければいけない。モチベーターと呼ばれる監督は、言葉やしゃべり方などを介して選手たちを鼓舞する術に長けている。想像の域を出ないが、後半開始からのなでしこの選手たちの動きを見ていると、前半の気持ちが消えてしまった感は拭えない」 つまり高倉監督はモチベーターにはなれなかった。ハーフタイムにおける指揮官のチームマネジメントで後手を踏んだからか。後半になでしこが放ったシュートはわずか1本に終わり、一気に波状攻撃を仕掛けてきたイギリスの7本に圧倒された。 迎えた29分。そのうちの1本を、これまでの五輪や女子ワールドカップでなでしこ相手に3ゴールをマークしている天敵、FWエレン・ホワイトに決められた。なでしこから見て左サイドから、DFルーシー・ブロンズがクロスを上げた直後だった。 山下が果敢に飛び出すも、クリアに入ったMF中島依美(神戸)と交錯。その前に飛び込んできたホワイトの頭でコースを変えられたボールは、緩やかな軌道を描きながら無人のゴールに吸い込まれた。初戦からキーパーを変えた高倉監督の選手起用を「勇気の必要な決断」と評価する鈴木氏は、一方で失点は山下のミスだと厳しく指摘した。 「クロスに対して飛び出したゴールキーパーは、絶対にボールに触らなければいけないという大原則がある。味方であれ敵であれ、誰がどこにいるのかがわかっている状況で、自分の前のさらに前で相手に触られた時点でミスだと言わざるをえない」 ビハインドを背負ったなでしこは、残り10分の段階で岩渕を投入する。代わりにベンチへ下がったのが、ボランチの中島だった交代策にも鈴木氏は疑問を呈する。 「私ならば中島ではなく宮川を下げる。ディフェンダーを一枚削ってアタッカーを増やすという考え方だけではなく、宮川がチームのなかでちょっとレベルが落ちると考えれば、たとえば左サイドハーフで非常にいいプレーを見せていた杉田を一列下げるなど、あの状況では左サイドバックを宮川以外の誰が務めてもいい。杉田と右サイドバックの清水(梨沙=日テレ)もどんどん前へ出ていって、極端な話、センターバックの2人で守るぐらいの、失点を恐れずにイチかバチかの総攻撃を仕掛けるしかない展開だったので」