息子が浮かばれません…孤独死した44歳息子の葬儀代95万円まで出し渋る元妻の仕打ちに〈69歳母〉唖然。さらに発覚した〈まさかの事態〉に絶望したワケ【行政書士の助言】
自腹を切って息子の葬儀をあげた母
美紀子さんが筆者の事務所に電話をくれたのは有起哉さんの四十九日法要が終わったタイミングでした。「元嫁があまりにも無責任なので困っています。突然、息子を亡くして心を痛めているのに、そんなことはお構いなしという感じで……」と声を振り絞りますが、何があったのでしょうか? 美紀子さんは有起哉さんの逝去が明らかになったとき、「お父さんの死を伝えないといけない」と思い、まずは元妻にLINEを送ったそう。「お久しぶりです。有起哉の母です。突然のことですが、有起哉が亡くなりました。栄斗君や陸斗君(どちらも息子の名前)には最後に顔を見せてあげたい。お葬式をそちらであげるなら、お任せするつもり」と。 しかし、既読になるものの、元妻からの返事はなし。音声電話やLINE電話をかけても、電話をとる気配はなく、留守番電話にも切り替わりません。 さすがに3日目には葬儀場の担当者から「ドライアイスにも限りがある。早く決めてほしい」と急かされ、美紀子さんは元妻の返事を待たず、通夜や葬儀をあげ、火葬を行い、とりあえず、遺骨を預かることに。そしてアパートの部屋も引き払い、スマートフォンや財布、銀行の通帳や保険の証券以外の遺品を処分。筆者が「諸費用(95万円)はどうしたんですか?」と尋ねると美紀子さんは「自腹を切りました」と答えます。 2019年から葬儀等の費用を故人の口座から支払うため、いったん凍結を解除し、出金できるように金融機関に申し入れる制度が始まりました。しかし、この制度を利用できるのは相続人のみ。今回の場合、相続人は二人の息子だけ(民法887条)。母親(美紀子さん)は相続人ではないので、金融機関へ仮払いを申請できなかったのです。 <葬儀等にかかった費用の一覧(95万円)> 葬儀代(香典で足りない分)60万円 遺体検案費用6万円 埋葬(前払)2万円 火葬5万円 家財等の処分15万円 家賃の滞納分7万円 元妻からの反応があったのは四十九日のタイミングでした。「財産関係をすべて引き渡してください」と。有起哉さんと元妻は夫婦だった二人です。美紀子さんは「『お悔み申し上げます』の一言くらいあってもいいのに…」と嘆きます。長男、次男はまだ二人とも未成年です。この場合、親権者である元妻が子どもに代わって交渉できます(民法824条)。 とはいえ美紀子さんは元妻からの要求を拒むつもりはありませんでした。しかし、条件があります。それは遺産のなかから葬儀等の費用(95万円)を繰り戻すこと。美紀子さんがすべてを取り仕切ったのは元妻がずっと無視し続けたから。「代わりにやってくださり、申し訳ありません」と思っていれば、その条件をのむでしょう。しかし、しかし、元妻は「勝手にやったことですよね? 頼んだつもりはありませんから!」と言い放ったのです。 葬儀費用を負担するのは喪主、相続人のどちらなのか。これは裁判所の見解が分かれますが、筆者は美紀子さんに「相続人が負担すべき」と判断した判例(津地裁・平成14年7月26日判決、東京地裁・平成18年10月19日判決)だけ伝えました。 美紀子さんはそのことを踏まえた上で「何もせずに放置して(有起哉さんを)腐らせるわけにいかないでしょ。私がやらざるを得なかったのよ。私の気持ちも考えてください」と切り返したのです。