【石田健×岸博之】つまらない日本を面白くするに必要なものとは?
慶應義塾大学教授・岸博幸先生が、各分野で活躍するいま気になる人と対談する不定期連載企画「オトナの嗜み、オトコの慎み」。今回の対談相手は、ニュース解説者・The HEADLINE編集長の石田健氏。 【写真】石田健×岸博幸、対談の様子
金銭欲や物欲よりも問題解決欲求が上
岸 石田健さんは自身のメディア『The HEADLINE』で編集長を務める傍ら、ニュース解説者として幅広く活躍されています。僕が持っている印象は「まじめ」。本当にやりたいことって何? 石田 今、メディア不況で、大手新聞社でさえ生き残りが厳しいといわれています。でも、大きなメディアが重要な役割を担っているのは確か。彼らが全国各地に支局や記者を置いているから、災害報道などが行えているわけです。大手メディアは知識のインフラ。ネットのニュースはその焼き直しで流通部門を担っているだけ。大手が厳しいからこそ、時代に合った新しいメディアを自分たちが作っていきたいと思っています。 岸 やっぱりまじめな答えだなあ。石田さんのコメントを聞くと、真っ当すぎて、「つまらない」とも感じてしまう。石田さんの心の奥には、儲けたい、名声が欲しい、高級車に乗りたいといった欲や野望はない? 石田 欲望やコンプレックスは少ないほうだと思います。これは僕だけでなく、世代的な傾向といえるかも。 岸 それが現在の30代なのかなあ。でも、会社や事業を大きくしたいという野望はあるんですよね。 石田 規模が大きければ大きいほど、伝えられることが増えますから。その思いは、野望といえば、野望といえる。例えば、会社の規模を大きくするために大企業へ営業に行き、何もわかっていない相手に時には「これじゃあ、全然ダメです」と言われる。「やれやれ……」と思うけど、「こちらが至らずに申し訳ございません」と、平然と振る舞うことはできます。会社を大きくするという野望のためにやっているから、平気です。 岸 客観的というか、冷酷というか。シリコンバレー的発想が強いんですかね。 石田 確かに、僕らの世代はシリコンバレーに強い影響を受けている気がします。大学時代にフェイスブックが上場。政治家よりもメタやグーグルの起業家に憧れました。 岸 彼らから何を学んだ? 石田 彼らからの学びかはわからないですが「大きな問いを解け」は意識してます。脱炭素とか、モビリティやヘルスケアの問題とか、大きな課題に向き合う起業家は増えましたよね。そうした事業で、世の中をよくすることができれば。 岸 世の中のため……。社会進化論的には正しいんでしょうね。自己の金銭欲や物欲を優先する人たちをどう思います? 石田 お金はあったほうがいい。それによって選択肢の幅が広がりますから。でも物欲は、ある程度のレベルを超えたら「ここでもう満足だ」っていうアッパーがある。僕はある程度満足しているから、金銭や物、女性への欲望ではないところに目が行く。社会の問題をパズルのように解くことに、欲求が向くんです。