「トランプ」ネタで支持者からも笑いをかっさらう。 Saku Yanagawaさんが見たアメリカ大統領選と「笑い」の世界。
―――― 『どうなってるの、アメリカ!』では、鎮痛剤「オピオイド」の蔓延やソーシャルメディアが若者の精神衛生に及ぼす影響など、メンタルヘルスにまつわる話題も多く取り上げられている。アメリカのみならず社会全体を象徴する課題としての印象を受ける。 ―――― Saku:日本でメンタルヘルスに問題を抱える人の割合は、アメリカとそう変わらないのかもしれませんが、こちらの方が診断や公表をしやすい環境だとは思います。僕の住んでいるアパートはペット不可の物件なのに、ほぼ毎日犬に遭遇するんですよ。エモーショナルサポートアニマルという人の心理的サポートをする動物です。医師が必要だと診断すれば、ペット不可物件でも飼うことができるので、コロナ禍で急増しました。それだけメンタルに不安を抱えている人が多いのかと身近に感じます ―日本でもうつやメンタルヘルスの問題を公表する有名人が増えてきました。ただし、それがお笑い芸人の場合、「あんなに明るい人なのに」と驚きのリアクションも散見されます。 Saku:コメディアンほどうつになりやすい仕事はないと体感していますよ。これは面白いだろうと自信のあるネタがウケなかったら、打撃が大きいですもん。実際、コメディアンはかなりの割合で自分のメンタルヘルスの話題をします。アリーナを満員にできるような人気があっても、華やかでもキラキラした生活を送っているコメディアンなんて、そうそういないです…僕もファンの「出待ち」なんて、されたこともなければ、毎晩会場の表口から出て、お客さんと同じバスに揺られて帰ってますからね (笑)。
―日本では、10月に映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が公開され、ヒットしています。日本でもアメリカの今後に注目が集まる中、Sakuさんは何を伝えていきたいですか? Saku:僕はこの本を通して、「アメリカってこうなんだ、日本のお笑いも変わらねば」と言いたいわけでも、自分の信条を押し付けたいわけでもなくて、皆さんが映画や音楽の歌詞、コメディをもっと楽しめるための地ならし、「グラウンド整備」をしたいだけなんです。新たな見方を発見できるための補助線になれたらなと思っています。 実は、先ほどのトランプネタも、会場で爆笑を取った後に、“プラウド・ボーイズ”を知らなかったある日本の方から「あのジョークってどういう意味ですか」と訊かれて、どこが面白かったのかをイチから説明する地獄の時間が発生しまして(笑)。もっと皆さんが知ってくれれば、いちから説明しなくても済めばいいなくらいの感じです。