地球帰還へ 探査機「はやぶさ2」がリュウグウで得た“宝物”
2回目をやるべきか否か……リスクと条件を慎重に検討
SCIによってつくられた人工クレーターは、直径10メートルを超える大きなもので、「おむすびころりんクレーター」と名付けられました。今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートしたことも記憶に新しいことでしょう。プロジェクトチームは人工クレーターの周囲を詳細に探査し、2回目のタッチダウンを行うかどうか、慎重に検討しました。傍から見ている立場からすると、誰もが2回目のタッチダウンに挑戦すると思っていたことでしょう。 しかし、実際はそう簡単な話ではありませんでした。タッチダウンは、はやぶさ2のミッションの中でも最重要なものです。そのため事前の計画では、3回分のチャレンジができるように予定が組まれていました。ただし、タッチダウンには最悪の場合、機体を失ってしまうというリスクが付きまといます。 1回目のタッチダウンの成功によって、はやぶさ2の機体には貴重なリュウグウの地表サンプルが格納されています。2回目のタッチダウンに挑めば、今度はリュウグウの地下物質を採取することができル可能性があります。地表下の物質も地球に持ち帰ることができれば、小惑星の進化の過程がさらによく分かり、太陽系の歴史や生命の進化について、大きな発見がもたらされるかもしれません。 もし事故が起きて、はやぶさ2が地球に戻ることができなければ、私たちは1回目で採取した地表のサンプルをも失うことになります。そのため、「2回目のタッチダウンをやらないで、既に手にしているサンプルを確実に持ち帰った方がいいのでないか」という意見も出たそうです。 プロジェクトチーム内では極端なケースも含めて、多くのシミュレーションを行い、安全にタッチダウンすることができるかを検証し、2回目の実行を決断しました。その結果、誤差60センチという桁違いの精度で危なげなく成功させました。JAXA宇宙科学研究所副所長の藤本正樹さんは「2回目のタッチダウンへの挑戦は、単にリスクを取ったわけではなく、慎重に条件を検討し、準備を重ねた上で大胆な挑戦をしています。そのバランスが絶妙で、世界中の研究者が注目するチームになったのではないかと思います」と評しました。この成功によって、プロジェクトチームは今後数十年間、誰も追いつけないほど重要な成果を挙げることができたといえます。