地球帰還へ 探査機「はやぶさ2」がリュウグウで得た“宝物”
「宝物」を地球に持ち帰る“最大のミッション”
はやぶさ2は、1年5か月の間、予定していた探査を次々に成功させ、科学的にも、工学的にも大きな足跡を残しました。そして11月13日、はやぶさ2が地球に向けてリュウグウを出発しました今後しばらく、人類はリュウグウの姿を見ることができなくなります。そんな一抹の寂しさから、プロジェクトチームは11月13日から18日にかけて、光学航法(ONC)カメラでだんだんと小さくなるリュウグウを撮影する「お別れ観測」を実施し、リュウグウとの別れを惜しみました。 はやぶさ2は、リュウグウの重力圏を出たあたりで太陽電池を太陽に向けた後、12月3日午前、イオンエンジンの噴射を開始。地球帰還に向けた本格的な運用に入りました。帰路においては星の位置などを頼りに適切なタイミングで、適切な方向に化学推進系スラスタを噴射させるなどして、はやぶさ2が目的の軌道から外れないよう正確に制御していきます。 そして最大の難関が、サンプルを詰めたカプセルの大気圏再突入です。「地球のある1点に着陸するようにカプセルを再突入させる必要があり、精密な軌道制御が求められますし、やり直しが効かない」と津田さんは説明します。今回、大気圏に再突入するのはカプセルだけの予定です。実は、はやぶさ2の探査機本体は地球には戻らず、カプセルを分離して、そのまま宇宙に留まり探査を続ける予定です。しかしタイミングを間違えればはやぶさ2も一緒に大気圏に突入してしまいます。実際、初代はやぶさも当初はそのまま飛行を続ける計画ではありませんでしたが、度重なるトラブルで「満身創痍」だったため、やむを得ず大気圏に再突入し、燃え尽きました。 今回、はやぶさ2が採取したリュウグウのサンプルが、地球に無事到着すれば、最近の分析技術によってリュウグウがどのように誕生し、現在までにどのような出来事を経験してきたのかなどリュウグウという星の経歴が詳しく分かることでしょう。そうすれば、太陽系の歴史や生物誕生の秘密などの一端が明らかになるかもしれません。厳しい環境の宇宙空間では、何が起こるか分かりません。貴重な“宝物”であるサンプルを地球に届けるという、ある意味で最大のミッションが、はやぶさ2には残されています。予定では、地球到着は東京五輪後の2020年末。無事の帰還を願っています。