「不妊治療を受けている」と上司に伝えると驚きの返答 知識不足や偏見も…「職場で話しづらい」女性は8割
いつか赤ちゃんに会いたいあなたへII
不妊を巡る様々な問題について、NPO法人Fine(ファイン)理事長の野曽原誉枝(のそはらやすえ)さんとともに考えます。 【表】保険適用となった不妊治療 自己負担額の目安は?
不妊治療が公的医療保険の対象となって2年がたちました。しかし、不妊治療に対する職場での理解はまだ進んでおらず、治療と仕事の両立に悩む女性は少なくありません。
職場で悩む人はほかにも
Hさんは38歳の時、仕事をしながら不妊治療を受けていました。サービス業で女性が多く、不妊治療をしていることは周りに話しやすい職場でした。 治療を受けていることを同僚に伝えると、同じように不妊や治療で悩みを抱える人がたくさんいて、驚いたといいます。どこの病院に通っているのか、どのような治療を受けているのか、費用はいくらかかっているのか――。不妊で悩んでいる同僚とは、仲間意識のような絆ができて、お互いの治療内容や医療機関についての情報交換をしたり、不安や悩みを打ち明け合ったりして、支え合うことができたと振り返ります。 しかし、上司となるとそうはいきませんでした。治療のために休暇申請を出すと、「直前すぎる。もう少し前に申請を出せないのか」と注意されました。排卵周期などの問題で、治療を受ける直前にならないと、休暇申請は出せません。しかし、上司からとがめられ、職場に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになったといいます。仕事を一時的にやめるか、諦めるしかないという気持ちが強くなり、結局、退職しました。
仕事を続けたかった
私が理事長を務めるNPO法人「Fine」では10月1日、仕事と不妊治療の両立について、アンケートの調査結果をまとめた「不妊白書2024」を発行しました。 その中で明らかになったのは、不妊治療経験者の約40%は両立が困難で働き方を変えたということです。そのうちの39%は「退職」を選択していました。 アンケートの自由コメント欄には「仕事を続けたかったが、『ご主人が仕事をしっかりしてるんだから、仕事をやめて治療に専念したらいいんじゃないか』と言われ、退職せざるを得なかった」、「『この職場の技術職で、子どもを産んで育てるなんて無理』と同じ女性社員に言われた」、「不妊治療を受けていることを上司たちに明かしたら、『仕事に対する責任感がない』『社会人としての常識がない』と口々に責められ、心が折れた」など、残念な声が寄せられました。