東日本大震災の発生2時間前、地殻に1センチのずれ 京大グループ発表、巨大地震予知につながる可能性
2011年の東日本大震災の発生2時間前に内陸の地殻が約1センチずれたことを明らかにしたと、京都大の研究グループが発表した。地震発生前に震源域のプレート境界がはがれ、ゆっくり滑って動く「プレスリップ(前兆すべり)」現象とみており、巨大地震の予知につながる可能性のある成果という。 【写真】「虹で地震予知」に生涯捧げた男とは 前兆すべりは巨大地震の予知につながるとされてきたが、地震計ではゆっくりした微小な揺れは検出しにくい上、地殻は平常時でも数センチ単位の揺れが生じていることから地震由来との見分けが困難だった。 研究グループは国土地理院の「GNSS(全球測位衛星システム)」のデータで東日本大震災の発生前の状況を調べた。近隣の複数の観測局データをまとめ、揺れの向きなどデータ間の相関の強さを分析する手法で地震由来のずれを検出したところ、震央から約100キロ離れた内陸部で、約2時間かけて約1センチずれたことが分かった。震央からの距離が近いほど相関も大きかったという。 東日本大震災と同じ海溝型地震で、今年8月に宮崎県で震度6弱を観測し南海トラフ巨大地震との関連が懸念された地震をはじめ、内陸型だった16年の熊本地震の前震でも同様の事象を確認したという。 研究グループの京大情報学研究科の梅野健教授は、巨大地震の直前に震源域上空の電離圏で電子密度の乱れが生じることも明らかにしており、東日本大震災で今回確認した地殻変動とこの乱れはほぼ同じタイミングで発生していた。 今後は空と陸の観測データを併用して巨大地震の発生1~2時間前の短期的予知のシステム構築を目指すといい、梅野教授は「巨大地震の発生の兆候が1時間前に分かればさまざまな対応がとれる。既存の観測局の拡充で低いコストで観測網が実現できる」としている。