『ペパーミントソーダ』1963年のアルバム、13歳の少女への手紙
『ペパーミントソーダ』あらすじ
1963年のパリ。アンヌと姉のフレデリックは厳格な女子校リセ・ジュール・フェリー校に通っている。ある日、アンヌは姉とボーイフレンドのマルクの間で交わされた手紙を盗み見し、クラスメートにはマルクが自分のボーイフレンドだと嘘をつく。アンヌと友人たちはセックスについて興味津々で、とんでもない知識不足ながらも真面目に語り合うのだった。授業中もどこかうわの空なアンヌはとにかく成績が悪く、問題ごとばかりを引き起こし、ついに教頭を決定的に怒らせる。そして、とうとう母親にこのままでは寄宿学校送りと宣言されることになる。
校舎の廊下、反響
「真夏の誰もいなくなった学校は、完全に私たちのものだった。恐怖、罰、鉛のような重苦しさ、そして笑い声、友情、無邪気さなど、すべてが私の中に蘇った」(ディアーヌ・キュリス)*1 主人公のアンヌ(エレオノール・クラーワイン)と姉のフレデリック(オディール・ミシェル)が通う、女子校リセ・ジュール・フェリー。ベージュがかったクリーム色を基調とする校舎。この建築物自体が控えめな薔薇のように美しい。しかし校舎の美しさや清潔さは、この学校に通う少女たちにとって抑圧の象徴でもある。厳格な教師の怒鳴り声と少女たちの無邪気な笑い声が廊下に響く。ほとんどの人が思い出せるであろう、学校の廊下独特のあの反響。 ディアーヌ・キュリス監督の28歳の長編デビュー作『ペパーミントソーダ』(77)は、思春期の直前を生きるアンヌと思春期を生きるフレデリックという二つの軸を通して、大人になること、大人として認められることの難しさを描いている。ここには少女たちの、無邪気だが切実な反抗がある。1963年の夏、パリ。大人たちは少女たちの成長を許そうとしない。自分の成長に喜びを覚えるたびに、誰かに否定されてしまうアンヌ。ストッキングを履くことが彼女にとってどれほど重要なことなのか、母親は理解しようとさえしない。 1977年にフランスで公開された本作には計300万人もの観客が劇場に駆けつけ、一時は『スターウォーズ』(77)に次ぐ興行成績を記録したという。少女版『大人は判ってくれない』(59)。傷つきやすいが大胆であり、すぐにバレるような嘘をついてしまうアンヌの少女像は、80年代に『なまいきシャルロット』(85)でシャルロット・ゲンズブールが登場するのを予見していたといえる。『ペパーミントソーダ』でアンヌを演じたエレオノール・クラーワインは一躍時の人となり、「ELLE」誌の表紙を飾っている。2022年にキャシー・カーセンティによる本作のコミック本が発売されたことは、初公開時の熱狂がタイムレスなことを物語っている。