ジェンダー平等のカギは、男性含む「全員」の当事者意識
女性活躍推進やDE&Iに取り組む企業が増える一方で、なかなか成果を実感できていない企業は少なくありません。日本は「ジェンダーギャップ指数2024」で146ヵ国中118位と、低迷が続いています。企業が女性活躍推進への取り組みを結実させるためには何が必要なのでしょうか。UN Women (国連女性機関)日本事務所長の福岡史子さんに、日本社会や企業が進むべきジェンダー平等への道筋についてうかがいました。
日本社会は着実に変化している
――今年6月に発表された「ジェンダーギャップ指数2024」において、日本は146ヵ国中118位でした。特に女性管理職比率の低さが目立ちます。日本のジェンダー平等の現状をどのように捉えていますか。 日本はとてもユニークな国です。今でも経済規模は世界的に最も大きい国の一つですが、日本社会で女性が重要なポジションに就くケースはまだ多くありません。 高度経済成長期の日本は、男性ががむしゃらに働き、女性は家庭のすべてを担う完全分業制で成り立っていました。みんなが同じ方を向いて、同一性を強みに成長してきたのです。その経験があるからこそ、「女性が活躍しないと経済は発展しない」という論理が浸透しにくく、新しいモデルを確立しきれずにいるのでしょう。 一方、この数十年で変わった面もたくさんあります。1980年代には、国連が採択した「女子差別撤廃条約」を日本も批准し、男女共同参画社会基本法や女性活躍推進法など、就労条件の男女差を解消するための国内法が整備されました。システム的には、日本も進化してきたのです。 ――それでも結果が伴っていないのはなぜでしょうか。 制度だけでは社会は変わらない、ということです。制度が整っても、それを実施するための社会環境の変化に至っていないのです。すべての人の平等をうたう憲法が制定されても、日本では家父長制が重んじられてきており、それをベースに社会システムが成り立っています。どの時代にも変化の先端に立つ人がいて、それに続く人たちが少しずつ現れることで、じっくりと社会が変わっていくものです。 例えば選択的夫婦別姓。法制化を望む声は1990年頃から高まっていましたが、いまだに導入されていません。一方、最高裁で審理されたり経団連から提言が出たりと、メインストリームの動きになりつつあります。NHK朝ドラ「虎に翼」でもお茶の間のエピソードになりました。社会の変化は、このように複数のものが影響し合ってもたらされると言えるでしょう。 ――日本でも着実に進んでいるということでしょうか。 私は2023年年末、20年ぶりに日本に帰国したのですが、「DE&Iの専任部署を設けている企業がすでにこんなにあるのか」とよい意味で驚きました。投資家から選ばれるためにESG経営を強化する必要があったり、政府から女性管理職比率向上の要請があったりと、複合的な誘因に突き動かされてムーブメントになってきたのでしょう。それだけDE&Iの重要性を理解している経営者が増えた証しです。 その他にも、国際女性デー(3月8日)が浸透し、また地上波テレビで生理をテーマにした特集が放送されていました。20年前の日本では考えられなかったことです。前出の「ジェンダーギャップ指数」のランキングでは他国と比べられてしまいますが、日本社会はゆっくり、しかし着実に変化しています。