ジェンダー平等のカギは、男性含む「全員」の当事者意識
「女性が管理職になりたがらない」をどう考えるか
――「管理職の女性比率30%」といった数値目標を置いている企業が多くありますが、その方法は有効なのでしょうか。 数値目標はあくまで指標で、本質的なゴールではありません。ただ、過渡期においては必要だと思います。本来は、男性も女性も同じ選択肢を持った人生であるべきですよね。しかし現実はそうなっていない。ステレオタイプやバイアスが影響し、提示されるチャンスには差があります。リーダー志向の女性でも埋もれてしまっている状態なのです。だからこそ、今は数値目標を掲げることで、そういった女性を引き上げるフェーズにいるといえます。特に意思決定層に女性を増やし、社内からステレオタイプを減らしていく動きが必要です。 ――数の不均衡が是正された先の、本質的なゴールはどこにあるのでしょうか。 個々人が、性別ではなく、個性に基づいた選択ができるようになることです。女性活躍推進の文脈で挙げられる指標は、経営層や管理職の女性比率ですが、それではややもすると「女性はもっと上を目指してください」という見え方になってしまう。意思決定層に女性が少ない今は戦略として有効かもしれませんが、「活躍」の形は幹部を目指すことだけではありません。 それは男性も一緒です。男性は昔から出世レースを競わされてきましたが、組織の上を目指すことだけがキャリアではないと感じている男性もたくさんいると思います。活躍の仕方は人それぞれです。ひと昔前の出世モデルのステレオタイプに影響されず、好きな専門分野を追求したり、サポート役に徹したりするなど、自分らしい選択ができるようになることがゴールだと思います。 ――個人の考えが、自分の固有の価値観なのか、ステレオタイプが刷り込まれた価値観なのかは判断が難しいように思います。 価値観は、育ってきた環境に影響されます。例えば女性管理職が当たり前にいる環境だったのか、そうではなかったのかによって、女性管理職に対する見方は変わってくるでしょう。ステレオタイプに影響されている人に対しては、上司や同僚が思い込みを解き、背中を押すようなコミュニケーションが必要だと思います。 「管理職になりたくない」といっても、絶対になりたくないのか、興味はあるけれど今の男性管理職と同じようには働けないと考えているのか、人によってグラデーションがあります。女性社員が管理職になりたくないと言っているなら、その原因を一緒に探ってみることで、課題解決の糸口が見えてきそうです。