ジェンダー平等のカギは、男性含む「全員」の当事者意識
固定的なジェンダーロール見直しを
――その一方で、企業の女性活躍推進は必ずしもうまくいっていないように見受けられます。政府の「202030」という、2020年までに社会の指導的地位に女性が占める割合を30%にすると定めた目標は未達で、2030年に持ち越されました。どこに課題があると思われますか。 女性活躍推進にどれだけの人が本気で取り組んでいるか、ということだと思います。「女性活躍」というネーミングも影響していると思いますが、ジェンダーギャップは社会全体の課題なのに、女性だけの課題のように見えているのではないでしょうか。 そもそも「女性活躍」の意義を考えたとき、女性が活躍して男性が活躍しなくなることを目指しているわけではありませんよね。「男性活躍」と「女性活躍」の土壌に差があるから、そのギャップを埋めようというのが、もともとの主旨です。というのも、女性が活躍することが男性の働き方改革をも促し、社会全体が発展していくことを目指しているのです。ですから本来ならば、性別に関係なく、全員が当事者なのです。男女で言うならば、男性がいかにコミットできるかが成功を左右すると考えています。 ――確かに「女性活躍」という言葉に対して、男性は当事者意識を持ちづらいかもしれませんね。 UN Womenでは2014年から「HeForShe(ヒーフォーシー)」という活動をグローバルに展開しています。直訳すると「彼女のための彼」ですが、ジェンダー平等を達成するために、すべてのジェンダーが協力し合うことを推進するプロジェクトです。「女性活躍」は女性だけの問題ではなく、みんなの問題。それが理解されない限り、日本での女性活躍推進の成果も限定的になってしまうでしょう。 ――「活躍」のギャップは何から生まれているのでしょうか。 従前から引き継がれてきたジェンダーロール(性別役割)です。「男性活躍」と「女性活躍」のギャップは社会の中にも家の中にもあります。平たく言うと、多くの男性は社会での活躍を期待されていて、多くの女性は家での活躍を期待されてきました。裏を返せば、女性の活躍というものが社会では軽んじられ、同様に、家事や育児における活躍も、“女性がやるもの”として、男性には求められてこなかったという背景があると思います。望むと望まざるとにかかわらず、社会規範によって、男性・女性としての役割や任が固定化・定着化しました。男性にしても、子どもと過ごす時間が欲しいけれど、その時間が十分に取れなかったという現実があるのではないでしょうか。 女性に社会での活躍を期待するなら、これまでの固定的なジェンダーロールを見直さなければなりません。女性が担ってきた家庭の仕事を分かち合い、女性が社会に出ていける環境を整える必要があります。その無償労働の割合を変えないまま女性の社会進出に取り組んでも、女性の負担が増えるだけです。