ジェンダー平等のカギは、男性含む「全員」の当事者意識
男性の育休取得率を上げるためにできること
――男性が家事労働に従事する割合を増やすことも必要ということですね。 最近は「産後パパ育休」という制度ができるなど、男性が育休を取得しやすくする取り組みも増えています。ただ、数字上は男性の育休取得率は上がっていても、取得期間は1週間だけにとどまるなど逆に短くなり、まだまだ運用面では制度の主旨に追いついていない印象がありますね。 先日、お会いしたある大企業の20代の男性社員は、「子どもはほしいけれど、育休は取りづらい。育休から復帰したときに、仕事がなくなっているかもしれないから」と話していました。 その不安はよくわかります。それは育休を取得した女性たちも、みんな通ってきた道だからです。育休をまともに取ると出世コースから外されるのではないか、人事評価がマイナスになるのではないか……。女性たちも、そういう不安を抱えながら産休・育休に入るのです。育休を取らない、マッチョな働き方ができる人を優遇する社会システム自体を変えないと、男性は安心して育児に参画できませんし、女性も十分に力を発揮できません。 ――男性が育休を取りづらい運用面の問題は、どのように解決できるでしょうか。 企業の風土を変えることでしょう。会社の発展にとってDE&Iがいかに重要かを社員一人ひとりが理解し、上司が部下に対して、性別にかかわらず「安心して育休を取ってください」と声をかけるのが当たり前の風土にすること。「帰ってきたときに席はない」などというおどし文句は、冗談でも言ってはいけないことでしょう。 外資系企業やベンチャー企業など、一部の業界では男性が当たり前に育休を取得するようになっています。育休で一時的に休業しても戻ってくる場所があるという安心感は、復帰後のモチベーションにつながりますし、こうした前例を作ることで次の世代も続きやすくなるでしょう。 ――どうすればそのような風土をつくれるのでしょうか。 まずはトップがDE&Iについて理解し、自分の言葉でビジョンを発信することが重要です。多様性のある組織を追求することで、ビジネスチャンスがどれだけ拡大するかを社長の言葉で語る必要があります。 また具体的な施策では、育休で誰かが抜けても仕事が回るよう、相互協力するインセンティブがある体制を整えることも大切です。例えば、社内インターンシップなど、違う部署の仕事を一部でも経験することで、職種転換や人事異動をスムーズにする試みなど。育休期間はフリーランス人材に入ってもらうのもいいでしょう。柔軟な人事の実現が、心理的にも実務的にも育休への障壁を取り除いてくれるのではないでしょうか。