ジェンダー平等のカギは、男性含む「全員」の当事者意識
経営層も人事も、変化に寛容であってほしい
――ジェンダー平等を達成するため、UN Womenでは今後どういった活動に注力されるのでしょうか。 まずは、これまで対話してきた日本企業の皆さまにもご協力いただき、「HeForShe」の日本版を立ち上げようと思っています。日本には、欧米諸国とは違う独自の文化や慣習があります。日本の歴史を尊重しつつ進化し続けられるような、日本にフィットした進め方を模索していきたいと思っています。 二つ目は、メディアと広告を通してステレオタイプを撤廃する取り組み「アンステレオタイプ・アライアンス」の拡大です。これには日本版がすでにあり、広告主となる企業や制作会社にご参加いただいています。DE&Iへの姿勢を見せることが企業ブランディングにつながることを発信し、これまでの成功事例・失敗事例を忌憚(きたん)なく共有し協働できる、賛同企業を拡大していきます。 もう一つ、UN Womenと国連グローバル・コンパクトが共同で作成した「WEPs(ウェップス:Women’s Empowerment Principles)」という、女性の経済的エンパワーメントを推進するための行動原則があります。認知度はまだ高くないとはいえ、すでに日本でも大企業を中心に320社に署名いただいており、2024年1月には経団連にも署名していただきました。今後は、WEPsの周知・広報にさらに注力していきます。 ――最後に、女性活躍推進やD&Iに取り組む人事担当者の方に向けてメッセージをお願いします。 かつては入社したら定年まで勤め上げることがキャリアモデルでしたが、今は転職が当たり前になっています。時代だけでなく、個人も変化します。若手のときに抱く理想と、中堅になってから抱く理想は違うかもしれません。時代も個人も揺れ動くからこそ、結局「価値観は人それぞれ」という結論に行き着きますが、それでいいのです。だから経営層も人事も、変化に敏感で寛容であるだけでなく、それをビジネスチャンスにつなげていってほしいです。 特に人事は進化を求められる仕事であり、企業の将来性にもたらすインパクトは大きい。現代において、人事は非常にやりがいのある仕事だと思います。 ただ最近、担当者の方々から「DE&I疲れ」のようなものを感じているという話も聞きました。一生懸命取り組んでいるけれど、なかなか社員に興味を持ってもらえず、消耗されている方も多いのかもしれません。 女性活躍を含め、DE&I推進の活動では、担当レベルでもつながりを作ることがとても重要です。ぜひ社内外に仲間を見つけてください。変化はすぐに起こるものではありませんが、具体的にアイデアを生かしつつ、一歩ずつ進むことで確実に変わります。自分の行動が進化の一部になることを信じて、パートナーシップ・スピリットで、共に頑張りましょう。
プロフィール
福岡 史子さん(UN Women日本事務所長) ふくおか・ふみこ/中学校英語科教諭、国際協力機構(JICA)研修監理員を経て、国際環境NGOコンサベーション・インターナショナル(本部米国ワシントンDC)日本代表を務める。2003年から国連開発計画(UNDP)のシリア事務所常駐副代表・臨時常駐代表。その後、本部ニューヨーク政策局地球環境ファイナンシング・コミュニティ開発担当上級顧問、アラブ局本部広報・パートナーシップ上級顧問などを歴任。2023年11月より現職。横浜市立大学国際関係学士、米国ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題大学院(SAIS)修士。