「殺すのは非道」秋田のクマ駆除、抗議電話に地域差 県内からは励ましも「反対意見は都市部の方から」
被害スーパーは7日午前9時から営業再開を発表
秋田市内のスーパーマーケットで11月30日、ツキノワグマが店内に侵入する事態が発生。47歳の男性従業員が頭をかまれるけがを負い、クマは発見から丸2日後、店内で捕獲・駆除された。重装備の警察官も出動した今回の大騒動。市の担当者によると、今回のようにクマがスーパーに現れるケースは「初めて」とのこと。緊迫した現場の対応や、寄せられた賛否の反響について、県や市の担当者に話を聞いた。 【写真】クマに襲われ八つ裂きに…恐ろしさを物語る生物の残骸 クマの侵入が発生したのは、青森と秋田で店舗を展開するスーパー「いとく」土崎みなと店(同市)。侵入したツキノワグマはメスで、体長1.1メートル、重さは69キロだった。秋田県生活環境部自然保護課、秋田市産業振興部農地森林整備課の担当者によると、クマが店から逃げて近隣へ被害が及ぶことを防ぐために店内を封鎖。最初はわなを仕掛けるところから対応を行い、12月2日、わなにかかったクマに吹き矢で麻酔をかけ、同日午後1時過ぎに店から搬出した。 対応は秋田県警と県・市で連携し、慎重にクマ捕獲を進めたという。同市の担当者は「市も県も方法について提案をする中で、警察で上層部に1つ1つ伺いを立てながら遂行する、といった方向になりました。現場で対応する方々や住民の安全を第一にという考えがあり、やはり時間はかかってしまいました」と振り返る。猟銃の使用については「結局は建物の中で、周りは住宅地であるので、銃の使用は許可されないと思います」と回答。店側から対応についての意見などはなかったという。 近年、人の居住地にクマが出没するケースが急増している。出没したクマの駆除を巡っては「かわいそう」などといったクマへの同情や、自治体の対応への苦情が度々問題視されている。終結まで丸2日間を費やした今回の事態について、県や市にもさまざまな声が寄せられているという。 「2日の夕方までで電話が14件、メールが3件届いております。電話の半分の意見が『クマは殺さないでほしい』といった、処分に反対のご意見でした。聞ける範囲ではありますが、このような意見は神奈川県や群馬県など県外の都市部の方からいただいておりました。残りの半分はほぼ県内からの電話で、『街中に出てきてしまったので、今回の対策の対処方法としての補殺に関して同意します』『今後も県、市、警察の対応を県民の安心のためにお願いしたい』と励ましの趣旨の電話でした」(同県担当者) 「ご意見については昨日だけで電話が37件、メールを8件いただいております。1割弱が肯定的で『頑張ってください』といった意見などもありましたが、他の8、9割の方にはご理解いただけず、『山に返せ』『殺すのは非道だ』などなかなか厳しいお言葉をいただいています」(同市担当者) 駆除に対する否定的な意見には苦悩もあると語る。同市の担当者は「やっぱり報道されて、クマの処分の情報が目に入ってしまうと何かスイッチが入ってしまうのでしょうか。メディアが『安心してください』といったテイストの記事を配信しても、なんでそれを反対に取ってしまうのかなと思ったりもします。やはりしょうがないところなのかなとは思ってますけどね」と複雑な胸の内を明かした。 一方で、今回の現場に近い土崎駅に加えて秋田駅でも、別のクマの目撃情報が寄せられており、当局は警戒を強めている。 今回のように、動物が人に危害を加えた場合はの対応にはどういったものがあるのか。同県担当者によると、クマが街中に出没した際は駆除することが決まっていると明かす。「県の鳥獣保護管理事業計画の中で、有害捕獲したクマに関しましては、処分を行うといった条件になっています。結局、山に帰しても戻ってきてしまった事例もありますし、山に返すといっても当然所有者がいる話ですので、その所有者さんの方の同意が得づらいといったこともあります」。 被害に遭ったスーパーはJR土崎駅から約1キロの距離。同市では里山付近など人が少ない場所での目撃情報はあったものの、今回ほど街の中に出没するのは「初めて」(同市担当者)と驚きを口にする。今後同県は襲われた従業員のけがの状況を確認して「ツキノワグマ人身被害見舞金」の給付を検討しているという。一方、同市では店への補償は検討しておらず、クマの市街地進出を阻む緩衝帯の整備強化の継続を明言した上で、「クマの侵入しやすいやぶを取り払うなどの対策しか現時点ではないです。あとは個別の対応でやっていくしかないため、できることは限られています」と現状を明かした。 今回の事態を受け、該当のスーパーは臨時休業となっていたが、運営元の株式会社伊徳は3日、7日午前9時からの土崎みなと店の営業再開を発表。「この度のクマの被害により、多くの方々にご心配とご不便をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます」としたうえで、「再開を迎えるにあたり、被害箇所の商品入れ替え、徹底した消毒清掃を行ったうえ、オープンいたします」と万全の対策を行うとした。
ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム