なぜソフトバンク武田翔太は3年ぶりの完投勝利をマークすることができたのか?
だからこそ、8回で球数が「104」に達していても、すすんで最終回のマウンドへ向かった。一死から3番に入っていた岡田雅利にソロアーチを浴び、二死からは栗山を歩かせたが、最後は力を振り絞って143kmのストレートで山川をセンターフライに打ち取る。チームの先発陣ではトップとなる3勝目にも謙虚な姿勢は変わらなかった。 「僕一人の力ではなく、チーム全体で勝ち取った1勝だと思うので、この勢いを続けて明日、明後日といい試合ができればと思います」 千賀滉大と東浜巨が離脱している先発陣で、カード頭となる火曜日を託されて2戦目。武田が成就させたチームの今シーズン初完投は、首位・楽天をゲーム差なしで追撃する状況下で、守護神・森唯斗が離脱しているリリーフ陣にも最高の休養を与えた。 「状態をもっと、もっと自分のなかでしっかりと上げていきたいと思いますし、慢心せずに頑張っていきたい」 勝利の余韻に浸るのも一瞬だけで、武田は気を引き締めながら前を見すえた。西武との残り2戦、そして緊急事態宣言の発令中は無観客での開催が急きょ決まった本拠地PayPayドームでのオリックス2連戦をへて、戦いの舞台はいよいよ交流戦へ突入する。 王者ソフトバンクを勢いづけた、復活への狼煙をあげつつある28歳の右腕の次回登板は、敵地バンテリンドームへ乗り込む25日の中日との交流戦初戦になる予定だ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)