なぜ阪神は機動力野球を貫き中日に逆転勝利したのか…明暗を分けた矢野監督と与田監督の采配力と準備力の差
阪神が13日、甲子園で行われた中日戦に2-1で逆転勝利を収め、引き分けを挟んで連勝を3に伸ばした。貯金は15とし、雨天中止で試合のなかった巨人とのゲーム差を3.5に広げた。勝敗を決したのは終盤の攻防。阪神は7回二死一塁から代走の熊谷敬宥(25)が盗塁を仕掛けて成功、近本光司(26)の同点タイムリーにつなげ、8回二死からジェリー・サンズ(33)が決勝の9号ソロ。一方の中日は7、8回の追加点機に走者を送れず流れを阪神に奪われることになった。両監督の采配力の差と、やるべき仕事を果たした阪神と、それができなかった中日の使命感、準備力の差が明暗をわけた。
与田中日の強攻策が裏目
「ラッキー7」にゲームが動いた。 1点のリードを今季初先発となるロドリゲスの力投で守ってきた中日は7回に追加点機をつかんだ。ビシエド、高橋の連打で無死一、二塁とした。ここで打席には2回に先制本塁打を放ち、第2打席もレフト前ヒットをマークしていた6番の木下。昨年も木下は秋山に対して打率.600と“カモ”にしていた。与田監督は強攻策をとった。だが、結果は、追い込まれて難しいボールを無理に右へ打とうとしてポーンと打球を打ち上げるライトフライ。さらに阿部が一塁フライ。根尾がレフトフライに終わり、1点を奪えなかった。 昨年まで7年間阪神でコーチを務め、落合博満監督時代に中日でもコーチ経験のある評論家の高代延博氏は「結果論ではなく、木下にはバントではなかったか」と指摘した。 「あと1点を先にどちらが取るかというゲームの流れだった。木下のそこまでの打撃内容を見ると、打たせたくなる気持ちもわからないではない。好投のロドリゲスをあと1イニング行きたかったので9番に打順が回ってくるまでに勝負を決めようとした狙いもわかる。だが、中日打線の得点圏打率の低さを考えると、バントで送り、内野ゴロ、外野フライでも、1点を奪える状況にして、阿部、根尾に回すべきだったと思う。そうすれば阿部、根尾に代打・福留という手もあった。福留は梅野の配球の傾向も秋山の球筋も良く知っている。なんとかしただろう。結果的にこういう接戦のゲームにもかかわらず福留という切り札をベンチに置いたまま負けた。木下も追い込まれてから進塁打を意識していたが、結果的に中途半端になってしまった」 対照的に、その裏の矢野野球はぶれなかった。 7回二死から代打の原口が粘って四球を選ぶと、矢野監督は“切り札“の熊谷を代走に送った。中日バッテリーは、3回、5回と阪神の盗塁を2度、封じ込めていた。ロドリゲスは執拗に牽制もした。だが、打者・近本の初球に熊谷は走ってきた。セ・リーグで屈指の盗塁阻止率を誇る木下も腰を浮かせ準備をしていた。だが、送球はワンバウンドとなり盗塁は成功。得点圏に進まれ、近本にはインサイドのスライダーを2球続けて、ロドリゲスが体勢を崩しながらも差し出したグラブをかすめるようにして同点のタイムリーがセンターへ抜けていった。