Apple Vision Pro デジタルマーケティング視点で体験してみた件
空間コンピューティング時代のコンテンツ設計
さて、次はWebコンテンツという面においてはどうでしょう。もちろんAVP用のアプリを提供し、AVPの特性を活かしたユーザー体験を提供することも重要だと考えます。実際、アメリカではアパレルブランドや不動産会社などがすでにAVPのアプリで新しい体験を提供しています。 AVPではWebブラウズすることも可能です。そのため、これからAVPのような大画面での閲覧も想定したUI設計が必要になってくる可能性が高いでしょう。 WebサイトのUIは、デバイスのサイズや種類に応じて変化し、その結果、現在はレスポンシブウェブデザインが主流となっています。今後、AVPのようなデバイスが主流になったとき、コンテンツ制作者はどうすべきかを我々は考える必要があるのではないでしょうか。 今までのような物理的なディスプレイという制約がないため、画面自体が従来の想定を超えるほど大きく表示することが可能です。今までのようなUIではユーザーにとってコンテンツは魅力的に映るのか、可読性はどうかなど、さまざまな観点でUI/UXを見直す機会がくることでしょう。 また、個人的に気になるのは、AVPの操作で使用する視線やジェスチャーの情報です。アイトラッキングデータを分析できるのであれば、ユーザーがどのコンテンツに注視してコンバージョンに至ったのかといった一連のデータが分析できるのではないでしょうか。しかし、Appleの「データとプライバシー」を読むと「視線入力は、アプリ、Webサイト、またはAppleとは共有されません。」と記載されていたため、難しいのかもしれません。
実生活におけるUXと周囲が感じる奇妙さ
AVPを着用すると視界が覆われるため、着用時の安全性が気になるところですが、その点も設計済みでした。没入感が強いため周囲の様子がわからなくなり、障害物にぶつからないように、障害物が近づいたら表示していたアプリ画面が透過して、障害物が見えるようになる仕組みになっています。 このようなさまざまな事象を想定した体験設計がすでに実装されていること自体がAppleらしいなと感じました。ちなみに公式サイトでは階段や滑りやすい環境、暗所での利用は避けるように記載されています。 前述したCasey Neistat氏の動画では、地下鉄内で隣に座った男性と会話をするシーンがありますが、AVPを着用したまま会話するNeistat氏に対して、「私のことは見えているのか?」と質問し、「青いネクタイをして、ネクタイピンを付けているのが見えますよ」と回答しているシーンがあります。 AVPの製品紹介写真ではゴーグルに着用者の目が表示されることを示すものがありますが、実際には「目なのかな…?」というくらいぼんやりとしか表示されません。目が表示されるという仕様を知っている人でないと気付かないくらいです。