Apple Vision Pro デジタルマーケティング視点で体験してみた件
まずAVPで感動したのが、過去2日間VR酔いで具合が悪くなった筆者がまったく酔わなかったことです。そして、圧倒的な画像の美しさ。「イマーシブ=没入感」とはこのことか、と納得しました。この没入感については筆舌に尽くし難く体験してもらうしかないと思いますが、この没入感を影で支えているのは、AVPのセットアップの緻密さだと推測しています。
AVPを利用する際に、ユーザーは両手を伸ばして手の位置を合わせたり、表示されるドットをタップしたりして、ユーザーの視線と手のセットアップを行う必要があります。AVPは主に指によるジェスチャーと視線で操作するため、この設定のおかげでジェスチャーの精度が上がり、ストレスフリーでシームレスな利用体験を実現しているのでしょう。実際、身長がさほど変わらない他のユーザーの設定のまま利用してみましたが、うまく操作できず、パーソナライズの精度の高さを実感することができました。 インターフェイスの操作は、指によるジェスチャーと視線によるカーソル操作、そして声による入力です。ジェスチャーは全部で5種類あり、「タップ」「タッチ」「ピンチして押さえたままにする」「ピンチしてドラッグ」「スワイプ」と文字で聞いただけでも何となく操作感を想像できるのではないでしょうか。ジェスチャー自体を理解することには時間は要しませんでした。 しかし、空間コンピューティングというだけあって、タップしたりタイピングしたりする対象もバーチャルなため、最初は空をタイピングしている感覚が不思議な感覚でしたし、もっと的確にタイピングできるようになりたいとも思いました。
マーケティングへ変化をもたらすのか
AVPは最低でも約60万円はします。気軽に購入できる代物ではありません。しかし、今回の体験を通じて、将来的にAVPが現在のスマートフォンのように普及するのであれば、確実に人々の行動様式に変革をもたらすだろうと思いました。 今までのデジタルマーケティングは、どうしてもデバイスの物理的な制約を受けがちでした。アプリケーションなどの違いはあったとしても、デスクトップ、タブレット、スマートフォンは、画面の広さという物理的制約を受けてきたわけです。ショート動画が隆盛な今、コンテンツに消費される時間は短縮化し、さらにAIも登場し、AIが何でも要約して教えてくれる時代がきています。 そういう時代になってきている今、AVPのような空間コンピューティングが普及したらどうなるのでしょうか。AVPなど製品を通して、ユーザーはバーチャルな世界にカスタマイズされたパーソナルな空間をもち、さらに今まで2次元が中心だった情報は、現実の空間にさらにレイヤーを重ねられる3次元へと変わり始めます。 空間にレイヤーを重ねることがどういうことなのか、それを理解するには動画を見てもらうのが一番いいでしょう。有名なYouTuberのCasey Neistat氏のYouTubeではAVPを着用し、ニューヨークの地下鉄に乗り移動するという動画があります。動画中には、タイムズスクエアの真ん中で腰掛け、その景色上に、Apple TVとYouTube、そして仮想キーボードを表示するというシーンがあります。 これは今までの視覚空間に新たにレイヤーを追加し、カスタマイズするという「空間コンピューティング」という概念が伝わりやすいシーンではないでしょうか。 このようにAVPは、今までアプローチが難しかったユーザーそれぞれの場所情報をかけ合わせて広告を表示したり、ユーザーにPush通知を送信したりすることも可能になるかもしれません。