「タリバン新政権」国際社会はどう対峙する? 中ロは融和的か
中国とタリバンは利害が相反する側面も
欧米以外の国は新「タリバン政権」にどう対峙するのか。中国とロシアは融和的でしょう。ロシアは今後も大使館をカブールに残すと説明していますが、1979年からアフガンに侵攻したソ連(現在のロシア)は、その後の1994年に結成されたタリバンにとって敵であり、その後遺症が今も残っているとすれば、ロシアの役割は限定的にならざるを得ません。 新しい政権がもっとも頼りにしているのは中国です。中国は今年の7月末に、タリバンの代表団を受け入れ、王毅外相と会談しました。米軍撤退後のアフガニスタンを見据えてのことでしょう。その頃には、タリバンによるカブール掌握が実現間近となり、将来のことなど中国と協議することが必要になったのだと思います。国際的に孤立する可能性が大きいタリバン政権にとって、中国との友好協力関係を進めることは喫緊の課題です。 タリバン政権と中国の間には、矛盾する、あるいは利害が相反する面もあります。中国の新疆ウイグル問題については、タリバン政権は間違いなくウイグルのイスラムを支持するでしょう。つまり、この問題ではタリバンは西側諸国と同じ立場に立つのです。 一方、タリバンは中国に対し、経済支援と、国連安保理など国際社会でのタリバン支持を求めるでしょう。中国としては「一帯一路」のためにアフガニスタンを利用できるとの考えもあるようですが、中国にとっての負担は小さくありません。中国としては各国によるアフガニスタン援助をつなぎとめようとするはずです。
タリバンは日本に支援の継続を求める?
新タリバン政権の成立は米中関係にも影響が及びそうです。中国はアフガニスタンを放棄したとして米国を非難し、アフガニスタンに対する援助の継続は米国の義務だと強調するでしょう。 日本は、2001年に旧タリバン政権が崩壊した後、国際社会と連携しつつ治安能力の向上、元タリバン兵士らの社会復帰、そして開発の3つの分野を柱としてアフガニスタンに支援を行ってきました。警察の強化、地雷除去、農村開発、水、交通、灌漑(かんがい)、教育などインフラ面の支援などが含まれます。支援総額は約69億ドルに上りました。 タリバン政権は今後もこのような支援の継続を求めるでしょう。日本人にはアフガニスタンに残ってほしいとしています。そのためには、前述したテロや過激派に関するタリバン新政権の姿勢が問題となります。日本に限らず、援助国にとっては困難なかじ取りが求められます。
----------------------------------- ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスタン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹