不動産所有者が知らないと後悔する「百万円単位で損しない」ための手続きミスを防ぐ方法
不動産の評価は難しい
また同族会社の経営者がその会社に個人で所有している土地を貸している場合も注意が必要だ。 「周辺の相場と比べて遜色ない地代で貸している場合は、小規模宅地等(特定同族会社事業用宅地等)の特例で、400までは評価額が8割減となります。しかし、この同族企業が赤字で、経営者が地代を取らずに無償で土地を貸しているケースだと適用外となり、土地の評価額で相続税を計算することになります。 実はその会社の顧問税理士がこの特例を知らないことが原因となっていることが多い。企業の顧問税理士は所得税や法人税には詳しい。しかし、相続税についても詳しいかというと、そうでないことも多々あるのです」(前出・伊藤氏) 相続の手続きで最も難しいとされるのが、不動産の評価だ。基本的に相続不動産の評価額は路線価(主な道路に面した土地1平方メートルあたりの評価額)に面積を掛けて計算する。しかし、その金額を元にして相続税を納めるのはもったいない。 「土地の評価額にはさまざまな減価要因があるからです。具体的には大規模な土地や道路に接していない宅地をはじめ、土地の形が悪かったり、傾斜があったりすると減価要因となります。また、お墓と隣接、線路が近い、高圧電線が上を通っているといったことでも減価される。 それぞれ計算の仕方を国税庁が発表していますが、利用せずに申告手続きをする個人も多い。まとまった相続不動産があるのなら、相続に詳しい税理士やコンサルタントに相談するのも一つの方法です」(前出・貞方氏)
不動産の共有は避ける
今年4月から新しく始まった制度に「相続登記の義務化」がある。相続によって「不動産の取得を知った日から3年以内」に登記を申請しないと法務局から「催告」を受け、申請しない場合は10万円以下の過料が科される可能性がある。 「相続登記をせずに面倒なことになったというケースはよく聞きます。たいてい、発端は遺産分割をせず、被相続人名義のまま放置して、不動産をきょうだいの共有状態にしてしまうこと。共有状態のままだと、相続人の子や孫の代になるにつれて、相続人がどんどん増えていきます。そうなるとなかなか手が付けられません。 相続登記には登記事項証明書や被相続人の戸籍謄本などだけでなく、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明が必要になります。場合によっては顔も名前も知らない相続人に連絡をして、書類をもらわなければならない。 結局、塩漬けになることが多いのですが、3年以内に登記しないとペナルティが科せられるようになりました。税理士としては、不動産を相続するときはできるだけ共有することは避けるようお伝えしています」(前出・伊藤氏) 夫に先立たれた妻など、配偶者の片方が先に亡くなった場合、1億6000万円か、法定相続分までは相続税が課税されない巨額の配偶者控除が認められている。相続税を払いたくないために、妻に全額を相続させるケースも多いが、少し考えたほうがいい。 「たしかに高齢になってくると、病気や介護など何かと入り用です。将来の不安に備えて、妻に全額遺してしまおうという方も少なくありません。 まずは、将来起こり得る不安を解消するためにどのくらいのおカネが必要なのかを算出しましょう。それ以上の部分は、二次相続を考えて、子に前もって相続させたほうが、結果的に相続税が安上がりになるケースも多いですね」(伊藤氏)