会費の不正利用が多発、「PTAの金」問題の根本原因 P連でも使途不明金…健全な運営に必要なこと
P連の保険事業の落とし穴
P連によっては、児童生徒・PTA会員がPTA活動中に事故やケガなどをした際に備え、PTA保険の加入を斡旋する「保険事業」を行っているが、「この保険事業もお金のトラブルにつながりやすい」と櫻井氏はいう。 保険事業の仕組みはこうだ。P連は、「団体扱い」として一定数以上の対象者(被保険者)がいる場合に、保険会社から「団体事務手数料」を受け取ることができる。これは、P連が保険会社の事務手続きを代行する代わりに受け取る報酬で、この手数料はP連の収益=活動資金となっている。 「この保険事業は、都道府県や政令指定都市など対象者(被保険者)の数が多ければ多いほど収益が大きくなり、会員数の多いP連では毎年1000万円を超えることもあります。しかし、多額の収益を扱うため、不正流用のリスクが伴います。また、本会計と保険事業の会計が分かれているため、本会計の不足分を保険事業の収益で補填するなどの不正が起きることもあります」 横須賀市P協は、2024年3月、神奈川県PTA協議会および日本PTA全国協議会を退会。これに伴い、2024年度より横須賀市P協独自で保険事業を始めるというが、「扱う金額が大きくなるため、保険事業開始に伴い毎月末に出金伝票と通帳の突合をしていく予定です。会計監査をしっかり行い透明性を確保しつつ、団体事務手数料の使途を明確に公開し、地域の子どもたちに還元される活動にお金を使っていきたいと思います」
健全なPTA運営のために
取材を通し、PTAと「お金」をめぐる問題のキーワードとして挙げられたのは、以下の5つだ。 ・ PTA会費の存在 ・ 会計、監査体制の不備 ・ PTAと学校との“癒着的”な関係 ・ P連における保険事業 ・ 一保護者が「おかしい」と思ってもなかなか声があがらず届きにくい これらの問題を改善していくためには、以下が必要になる。 PTA会費の見直し・削減:本当に必要な活動に必要な資金のみを集め、過剰な会費は徴収しない。会費ベースから活動ベースの会計へ 会計・監査体制の強化:専門知識や経験のある人が会計を担当し、監査を徹底する。 学校との適正な関係構築:学校への寄付は法令に基づき、透明性のある手続きで行う。 P連の健全化:「何のためのP連か」を問い直し、利益追求ではなく、会員や児童生徒に還元できる組織運営を行う。 当事者意識を持つ:PTA会計について疑問や課題を感じたら、総会等で声をあげるたりPTA本部に問い合わせる。 PTAは、児童生徒の健全な育成のために重要な役割を果たす組織である。しかし、お金の問題によって不信感が募り、組織の存続が危ぶまれるのは本末転倒なのではないだろうか。PTAの存在意義も含め、関係者全員が対話を重ね、これまでの運営を検証し健全な運営を実現していくことが求められている。 (企画・文:長島ともこ、注記のない写真: mapo / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部