会費の不正利用が多発、「PTAの金」問題の根本原因 P連でも使途不明金…健全な運営に必要なこと
PTA会費が、学校の裁量により給食費未納分の補填に
PTA会費の使われ方について、関東地方に住む保護者から驚くべき情報が寄せられた。「PTA会費が、学校の裁量により、給食費や教材費といった学校徴収金の補填に使われていた」というのだ。 2024年4月から子どもが通う小学校のPTA会長になった岩井利枝子氏(仮名)は、こう言う。 「新しくPTA会長に就任し、引き継ぎの際に昨年度の会計簿を見たら、気になる支出がありました。その支出の摘要欄を見ると、『給食費未納分の補填』と書いてあったのです」(岩井さん、以下同) 未納金をPTA会費で補填し、年度会計を締結していたことが発覚したのだ。岩井氏は続ける。 「さらに驚いたのは、PTA会費の通帳管理は学校側が行っており、PTA会長の承認なしにお金が出せる状況だったのです。決算の承認についても、校長先生、教頭先生が押印するスペースはあるのにPTA会長の押印スペースがありませんでした。PTA会費なのに、PTA会長の承認なしに、学校の裁量でお金が出せる状況だったことが明らかになったのです」 岩井氏によると、前任のPTA会長や会計担当者は未納金補填について気づかず、過去の会計でも同様の処理が行われていた可能性が高いという。 「前任の会長さんも会計さんも、くじ引きで仕方なく活動していた方とのこと。やらされている人がやると、『最低限のことだけしておしまいにしたい』という気持ちからチェックがおざなりになるもわからなくないですが、学校側がPTA会費の通帳管理を行い、会長の承認なしにお金を出せる状況はどう考えても不適切であると思います。今年度は、学校と対話を重ねながら、会計処理の不正を防ぐ体制を整備することはもちろん、PTAのあり方、PTA会費の見直しなどを行っていきたいと思います」
「お金のかからないPTA活動」を
学校のPTAとお金をめぐる問題を改善していくためには、どのような方法があるのだろうか。 栁澤氏は、さまざまな不正行為や寄付問題などの根底にあるのは、「PTA会費の存在そのもの」だと指摘する。 「PTA会費は、必要な活動資金を確保するための手段であって、活動の目的ではありません。『なぜPTA会費を集めるのか』という原点に立ち返り、PTA活動を“会費ベース”ではなく“活動ベース”で考える。例えば、僕が関わってきたPTAでは、これまでの会費ありきの活動を見直して規約を改正し、ここ10年くらい、その年ごとに活動に必要なお金を会員数で割ってPTA会費を決めています。年会費はその年により異なり、1000円から2000円くらいですが、300円まで削減された年もあります。 PTAの任意加入制が全国的に広がり、活動の省力化や適正化が進む今、PTAはたくさんのお金をかけて何かをする時代ではなくなってきているように思います。『お金のかからないPTA活動』こそが、現代社会のニーズに即しているのではなのではないでしょうか」 また、教員の負担軽減のため、文部科学省は、学校徴収金の会計管理は自治体が行うよう求めているが、依然として学校に任せている自治体が多い。そんな中、PTA会費を学校徴収金と一緒に引き落としてもらう“抱き合わせ徴収”を行っているPTAも多いが、「PTAと学校は、そもそも別団体です。本来ならば、PTA会費の管理に学校が関わるべきではありません」。 栁澤氏は続ける。 「メディアの報道などにより、PTAのお金の使われ方やPTA会費の管理の仕方に関心を持ち、『ちょっとおかしいのではないか』と疑問を感じている保護者は増えてきているように感じます。そういう方は、PTA総会の席で質問したり、議案に意見したりするなどの意思表示をするのが望ましいのですが、全体からみるとごく少数で、大多数の保護者は、『おかしいと思うこともあるけれども議論するのが面倒』『(そもそも)どうでもいい』という感覚でいるのが現状でしょう。 そんな中でも、思い切って声をあげ、こうした疑問や課題を草の根的に広げ、社会全体で考えていく風潮をつくっていくことが大切なのではないでしょうか。また、逆に提案する側のPTA役員も、質問や意見をいいやすい雰囲気をつくったり、それを受け止める風潮も必要ですね」