「消費されて終わったなと…」川で溺れた小中学生を助けようとした夫が死亡『美談』の報道に違和感覚えた妻は研究者の道へ『どうすれば事故を防げるのか?』
2012年、大阪府茨木市の川で溺れた小中学生を助けようと、通りかかった男性が川に飛び込み、小学生は無事に救出されましたが、中学生と男性は死亡しました。 【写真を見る】子ども2人を残して亡くなった隆司さん 事故の後、亡くなった男性の妻・岡真裕美さんは研究者となり、川の危険や事故防止、子どもの行動などについて研究。講演や出版など、啓発活動に取り組んでいます。なぜ事故は起きてしまったのか、どうすれば未然に防げるのか...。自分と同じような思いをする人を1人でも減らすため、岡さんの活動は続きます。
「この川で私の夫が死にました」
(岡真裕美さん)「実はこの川で私の旦那さんが死にました」 (小学生)「えーっ!」 (岡真裕美さん)「びっくりやろ。私もびっくり」 大阪府内の小学校で、児童に向けて、つらい出来事を明るい口調で話す岡真裕美さん(44)。 (岡真裕美さん)「川ってめっちゃ怖いから、みんなは簡単に遊びに行ったりしないようにしてください。行くときは大人と一緒に行くこと。あと、ライフジャケットを着てください」 伝えたいのは「身近な川の危険」。こうした活動のきっかけとなったのは、12年前の事故でした。 2012年4月、大阪府茨木市の安威川で、川遊び中に溺れた小中学生を助けようと、通りかかった夫の隆司さんが川に飛び込みました。小学4年の男の子は無事に救出されましたが、男子中学生と隆司さんが命を落としました。 現場となった安威川は、今は草が生い茂っていますが、当時は地域の人が利用する身近な河川敷だったといいます。 (岡真裕美さん)「日常的に犬の散歩とか、対岸までわたって帰ってくる人たちもいたので、本当に憩いの場でした。(注意喚起の看板は)夫が亡くなってから当時の茨木市長がたててくださった」
“美談”になって終わり…事故の報道に違和感「消費されて終わったなと」
ジョギングが日課で、よく河川敷を走っていた隆司さん。水泳も得意でしたが、救助に入った川で深みにはまってしまったとみられています。当時34歳。2歳と5歳の子どもを残して、突然いなくなりました。 (岡真裕美さん)「泣きたいけど、泣いたら子どもが悲しむんですよ。特に5歳の息子が『お母さん泣かんといて』って怒るんですよ。あかん泣いたら、子どもたちの前で泣いたらダメって思って、泣かないようにして…」 事故は大きく報じられましたが、岡さんはその内容に違和感を覚えたといいます。 (岡真裕美さん)「『優しい人だったんでしょ』とか『正義感強い人だったんでしょ』と言われることが多いですけど、本当にごく普通のお父さんという感じでした。若いパパが、よその子どもを助けて亡くなったというので、“すごくいい話”、美談になって、終わりだったんですよ。水難事故予防とか、事故の再発防止に関して報道してほしいと思いました。葬儀が終わったら(取材が)ぷつっと無くなって、消費されて終わったなと思ったんです」