日本Sベンチ攻防…何がヤクルトとオリックスの明暗を分けたのか…落ち着いた高津采配と“セ野球”に意識過剰の中嶋采配
一死から青木に中前打を打たれ、3番の山田を迎えると、ここまで無失点投球を続けてきた田嶋を92球で交代させたのだ。フォークの抜けも目立ち、決して調子はよくはなかった。しかも、山田は、今シリーズでヒットが1本しか出ていないが、この日は強烈なライナー性の打球を2打席続けるなどバットは振れていた。中嶋監督は、ベテラン変則右腕の比嘉を山田にぶつける。結果はショートゴロ。二死となってセの本塁打王で、第1戦に2ランを打っている村上を迎えたところで中嶋監督が再びベンチを出た。 オリックスベンチには2つの選択肢があった。(1)比嘉を続投させて、村上を申告敬遠しサンタナと勝負。(2)山田か富山かの左をワンポイントで村上にぶつける。だが、中嶋監督が選んだのは“第3の選択”である右のバルガスだった。 バルガスは村上と勝負したが、四球で歩かせた。続くサンタナにも四球。制球が定まらず二死満塁とされ勝負強い中村にセンターへ逆転の2点タイムリーを打たれた。バルガスの乱調は誤算だったのかもしれないが、結果的にはベンチの継投ミスである。 さらに中継プレーで目を疑うようなハプニングが起きる。センターからの送球を受けた三塁手の宗が、二塁に向かっていた打者走者の中村を封じこめようと、二塁へ投げようとして途中で止めたが、スローが止まらず、なんと送球は方向違いのレフト前へ飛んでいったのだ。その間、サンタナがホームを陥れ、1-3と逆転を許したのである。 だが、ヤクルトは逃げ切ることができない。 力投を続けていた小川が、6回、先頭の吉田正に左中間を破る二塁打を許し、続くパの本塁打王、杉本に147キロの外角ストレートをライトスタンドまで運ばれた。88球目。初回から飛ばし、シュート回転していたボールを“ラオウ”は打ち損じなかった。 流れはオリックスに傾く。続く7回二死一、二塁で、吉田正が3番手の田口のスライダーを逆方向へと運ぶ。当たりは良くなかったが、打球はレフト線でポンとはねた。 1点を勝ち越されたヤクルトだが、高津監督は冷静だった。続く杉本を申告敬遠。満塁となったが、中嶋監督が、代打ジョーンズを告げるのを見届けてから、マウンドに右腕の石山を送り込んだ。石山が、鋭く落ちるフォークでジョーンズを三振に打ち取り、失点を最小限の1点で食い止めると、その裏にドラマが待っていた。