なぜヤクルトは1勝1敗のタイに戻せたのか…冴えた“日本S仕様”の高津采配と高橋133球完封劇の理由
日本シリーズの第2戦が21日、京セラドーム大阪で行われ、ヤクルトが2-0でオリックスを下してシリーズ成績を1勝1敗のタイに戻した。ヤクルトの先発、高橋奎二(24)は1回から5回まで毎回走者を出しながらも粘り強く耐えて得点を許さず133球の完封勝利。一方のオリックスの先発、宮城大弥(20)は6回一死までパーフェクトピッチングを続けていたが8回二死一、二塁からベテランの青木宣親(39)に決勝タイムリーを許し降板した。紋切型の起用をせずに高橋を続投させるなどした高津監督の日本シリーズ仕様の采配が光った。
「気合で投げました」
高津監督に迷いはなかった。2-0で迎えた9回。すでに122球を投げていた高橋をマウンドに送り出した。前日、守護神のマクガフはひとつのアウトも取れずに2点差を守れず悪夢のサヨナラ負けを喫していた。セットアッパーの清水も32球を投じている。 「昨日の負け方がちょっと気になったもんですから、今日は切り替えてね」 高津監督の期待を背に高橋は、首位打者の吉田に対して149キロのストレートで勝負した。強烈なライナーを打たれたが二塁ベースに寄っていた西浦が正面でキャッチ。続く本塁打王で、この日2安打を放っている杉本にも148キロのストレートで押し込みライトフライ。そして最後は、前日に貴重な四球を選びサヨナラ劇につなげた代打ジョーンズを抜いたカーブでスイングアウト。高橋は、体をくるっと一回転させて、「オッシャー」と雄叫びをあげ左手で力強いガッツポーズを作った。 133球の5安打5奪三振2四球のプロ初完封を日本シリーズという大舞台で成し遂げたヒーローは、「気合で投げました」とお立ち台で声を震わせた。 昨年まで7年間阪神でコーチを務め、オリックスでもヘッドコーチの経験がある評論家の高代延博氏は、「高津監督の落ち着いた采配にうならされた。シリーズをトータルで見ている采配に思えた」と、その高津采配に注目した。 「おそらく1点リードのままでも高橋を続投させるつもりだったんだと思う。清水が前日に32球、マクガフは不安定で2点差を逆転されてのサヨナラ負け。そのクローザーの心理状態と、高橋の調子を天秤にかけて、後者を選んだのだろう。高津監督は紋切型の勝利パターンを使わず短期決戦ならではの好判断をしたと思う」 高津監督は、日本一を3度手にした名将、故・野村克也のノムラID野球を継承している。土壇場で冴えた日本シリーズ仕様采配のバックボーンだ。