なぜ日本S初戦でオリックスの「しびれた」劇的逆転サヨナラが生まれたのか…ジョーンズの四球とヤクルトのミス
プロ野球日本シリーズの第1戦が20日、京セラドーム大阪で行われ、25年ぶりの頂点を狙うオリックスが9回裏に2点のビハインドからの逆転サヨナラ勝利でヤクルトに先勝した。オリックスは“5冠エース”の山本由伸(23)が6回1失点で、ヤクルトの先発、奥川恭伸(20)よりも先にマウンドを降りる最悪の展開となり、8回には村上宗隆(21)に勝ち越しの2ランを許した。だが、9回にヤクルトの“守護神”スコット・マクガフ(32)を攻め無死満塁から宗佑磨(25)の2点タイムリーで同点とし、続く吉田正尚(28)がセンターオーバーのサヨナラ打を放ち、シリーズでは71年ぶりとなる2点差の逆転サヨナラ劇を演じた。
「凄かったです」
日本シリーズでは毎試合行われる勝利監督インタビュー。サヨナラのヒーロー、吉田がもみくちゃにされた歓喜の余韻が残るお立ち台に呼ばれた中嶋監督はまだ興奮が冷めやらない様子だった。 ――凄い試合でした 「はい。凄かったです」 ――今の気持ちは? 「いやあ。凄かったとしか…ないですね」 指揮官は、そう2度繰り返した。 幕が下りるまで何が起きるかわからない“オリックス劇場”である。 両チームの間を行き来した勝負の流れは後半からは完全にヤクルトだった。ヤクルトは徹底した“ファウル作戦”で、絶対的エースの山本に112球もの球数を投げさせ、6回に2つの四球で作った一死一、二塁のチャンスに中村が先制のタイムリーをセンター前へ放ち奥川よりも先にマウンドから引きずり下ろした。奥川は6回まで無失点。7回に代打・モヤに、この試合唯一の失投とも言えるスライダーの抜け球をライトへ運ばれ同点とされるが、8回に若き4番の村上が、3番手のヒンギスのチェンジアップを捉えてバックスクリーンに驚愕の勝ち越し2ラン。1-3と2点のリードを奪い、最後のマウンドには、シーズン31セーブの“守護神”マクガフが送り出されていた。 だが、オリックスベンチに誰一人あきらめている選手はいなかった。 先頭の紅林がフルカウントまで粘りライト前ヒット。ここで中嶋監督は代打にジョーンズを送った。来日2年目の今季は、代打での打率が.429、出塁率は.568の切り札である。一発警戒のヤクルトバッテリーは外角低めの配球を徹底した。 ジョーンズは、ボールワンからカット、スプリットに連続で空振り。簡単に追い込まれ、打てる気配はなかった。だが、ここからがメジャー通算1939安打、282本塁打を誇るメジャーリーガーの本領発揮である。執拗な誘い球に手を出さず、ストライクゾーンに来たボールはファウルにして、ついに四球を選び打線をつないだのである。 試合後、中嶋監督が「あきらめることなく、ジョーンズもしっかりと四球を選んでくれた」と名前を出し絶賛した殊勲の四球だ。 元阪神、ダイエー(ソフトバンク)、ヤクルトでプレーした評論家の池田親興氏も、この四球をサヨナラ劇を生んだ要因としてピックアップした。