話題の「第2の月」は月じゃない、NASAが異論、地球に本当の新しい月ができる日は来るか
小惑星研究を通じて地球を守る
科学者たちは、小惑星の衝突による潜在的な脅威を評価したり、その性質を研究したりするために、小惑星の軌道を検出・追跡する努力を続けている。その知見から、地球が月ほど大きくて重要な衛星をもう1つ持つようになることは、当分はないだろうと断言する。 ではなぜ、今回の2024 PT5は大きな注目を集めたのだろう? 米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の惑星天文学者アンドリュー・リブキン氏は、科学者が事前にミニムーンの存在を予測できるようになった初めての事例の一つであることが、その理由かもしれないと言う。 リブキン氏は、NASAが最近実施したDART(二重小惑星軌道変更試験)ミッションの調査チームのリーダーを務めた人物だ。DARTは、人類による地球防衛計画の一環として、人工物をぶつけて小惑星の軌道を変えられることを初めて示した。 現時点で次に地球に接近すると予測されている比較的大きな小惑星は、直径335メートルの「アポフィス」で、2029年4月に地球の軌道を安全に横切ると予想されている。アポフィスは高速で通過するため、地球の重力に捕捉される可能性はほとんどない。地球に最接近する際には月までの距離の10分の1ほどの近いところをかすめるため、肉眼でも見えるはずだ。 アポフィスの接近は2024 PT5に比べて少々恐ろしく感じられるかもしれないが、新世代の小惑星ハンターにとっては魅力的な遭遇となるに違いない。 「小惑星は単なる恐怖の対象ではありません」とリブキン氏は言う。「宇宙は素晴らしいものや不思議なものであふれているのです」
文=Tatyana Woodall/訳=三枝小夜子