話題の「第2の月」は月じゃない、NASAが異論、地球に本当の新しい月ができる日は来るか
小惑星「2024 PT5」を衛星と呼べない理由とは、「準衛星」ならもうある
最近、地球に「第2の月」あるいは「ミニムーン」ができたというニュースを皆さんもご存じかもしれない。「2024 PT5」と名付けられたこの小惑星は、2024年9月29日から11月25日まで、地球を回る軌道にとどまる。 ギャラリー:新しい月どころか、地球にぶつかったら大変な天体12点 とはいえ、2024 PT5の大きさは約10メートルとスクールバスほどで、地球に最接近しても月までの距離の5倍以上遠くにあるため、肉眼や家庭用望遠鏡では見ることができない。米航空宇宙局(NASA)本部の太陽系小天体主任研究員であるトーマス・スタトラー氏は、この天体を「ミニムーン」と呼ぶことさえ大げさだと言う。 衛星にはっきりした定義があるわけではないが、この小惑星が地球の衛星になるには、一般的に言って、地球―月系の重力に捕らえられ、地球の周りを何度も回らなければならない。現在のところ、2024 PT5にはそのような条件は当てはまらない。10月2日付けのNASAの「Planetary Defense」ブログでも、この天体は「完全には『ミニムーン』とは言えない」としている。 科学者たちは毎年、地球から月までの距離の10倍以内に接近する約1000個の天体を監視しているが、その大半は非常に小さく、あまり長い間地球の周りにいることはない。そのため、これらの天体よりもやや大きく、長めに地球の近くにとどまる2024 PT5は注目に値する。とはいえ、地球の一生に比べればほんの一瞬だ。 それでも、2024 PT5の存在は私たちに疑問を投げかけてくる。地球が月ほどの大きさの第2の月を持つようになる可能性はあるのだろうか? もしそうなったら、地球上の生命はどのような影響を受けるのだろうか?
「月」になる条件は?
小惑星は、太陽系の他の多くの天体と同様に、太陽の重力に引っ張られながら宇宙空間を移動している天体だ。地球の近くもひっきりなしに通過しているが、これらが「月」と呼ばれるかどうかは、その質量や組成や形とは関係なく、地球を周回するかどうかで決まる。 2024 PT5が「月」とは言えないのは、この小惑星が小さいからではなく、1周もすることなく地球を周回する軌道から外れてしまうからだ。 月は、地球の周りを約1カ月で1周する楕円軌道を描いて公転している。その際、月の重力は地球を引っ張り、質量分布を変化させ、ラグビーボールのような形に歪ませる。これにより生じる潮の満ち引きは、地球の海洋生態系や多くの海洋生物の繁殖行動だけでなく、私たち人間の航海や貿易にも重要な影響を及ぼしている。 「地球上の生物のほとんどすべてが、月の周期から何らかの影響を受けています」とスタトラー氏は言う。「私たちの存在は、月の存在に大きく依存しているのです」 もし今ある月に匹敵する大きさの衛星がもう1つ、安定した配置で存在すれば、潮の満ち引きなどはまったく違ったものになるだろう。 一方、2024 PT5が地球の近くに滞在する期間は短く、研究の対象になるほどの影響を及ぼすことはないだろう。スタトラー氏は、「これよりもずっとミニムーンらしい天体が過去には存在していましたし、今後も出現するでしょう」と言う。 2016年には、ハワイ語で「振動する破片」を意味する「カモオアレワ」という小惑星が、約100年前から約300年後まで地球の周りを回るように見えることが研究により明らかになった。 カモオアレワは40~100メートルと観覧車ほどの大きさ。地球とよく似た楕円軌道と周期で太陽の周りを公転しており、地球からは月のように私たちの周りを回っているように見えるが、実際には地球の重力に捕らえられているわけではないため、真の月とは言えず、「準衛星」と呼ばれる。