全米女子OP2日目に渋野日向子が単独首位に浮上…快進撃理由は「今までの自分を捨てたこと」
初日に「30」を2日目には「28」をマークしたパット数においても、一時はクロスハンドグリップを導入するなど、日本と性質が異なるアメリカのグリーンに悩み、試行錯誤を繰り返していた面影はまったく見られない。2020年の最終戦を迎えて、何が渋野を変えたのか。「うーん、要因ですか……」と数秒間の沈黙で思考回路を整理しながら、渋野は胸中に秘めてきた思いを明かしている。 「いままでの自分を捨てることです。いや、捨てたことかな。プロになりたてとか、ゴルフを始めたてぐらいのときの気持ちの方が、ゴルフに対しても気持ち的にもすごく成長できると思って。(快進撃の要因は)そうして気持ちを初心に返らせたことになのかな、と思っています」 初めて海外での試合に挑んだ昨年8月のメジャー、AIG全英女子オープンを制して絶やさなかった笑顔は「スマイリングシンデレラ」として世界から脚光を浴びた。無我夢中で勝ち取ったタイトルだが、いつしか「メジャー優勝経験者」の肩書きにプレッシャーを感じていた。 歴史に名前を刻んだ実績は確かに自信となったが、呪縛にさいなまされていては意味がない。連覇を狙った今夏の全英で予選落ちを喫し、舞台をアメリカに移して臨んだメジャーでもANAインスピレーションで51位タイ、KPMG全米女子プロで58位タイに終わったなかで原点に返った。 プレッシャーから解放されたことと、苦しみながらも積み重ねてきた努力の相乗効果はパット以外にも表れている。スコアマネジメントで重要な位置を占めるフェアウェイキープ率は初日が85.7%、2日目が78.6%を、パーオン率はそれぞれ83.3%と77.8%をマークしている。2日目でやや数字が落ちたのは、ファーストカットやグリーンのカラーにとどまったケースが増えたからだ。 「とりあえずこの位置(首位)にいる間に(記念の)写真を撮って、ちょっと余韻に浸って。あと2日間はとりあえず伸ばせるときには伸ばしたいですけど、明日は風が強いらしいので、耐えて粘るゴルフが必要だと思うので、そこは徹底的に頑張っていきたいと思います」 単独首位で臨む3日目以降でも気象条件をにらみながら、硬軟織り交ぜてのゴルフを貫いていくと渋野は前を見すえた。3日目で首位に立ち、最終日もリスクと表裏一体で攻め抜くゴルフで全英を制した昨夏とは、立ち居振る舞いが明らかに異なっている。ちょっぴり大人になり、安定感をも身にまとった渋野の視界に、日本人選手で前人未踏となる2度目のメジャー制覇が見えてきた。