「オシャレは老化予防の最大の秘訣」90歳現役医師は毎日自分で服を選び脳も活性化
自分がどういうファッションが好きで、どんな色を好み、どんなものを身に着けたいか。自分に似合うもの、自分を少しでも素敵に演出できるファッションを考えることは楽しくもあり、脳への刺激にもなる。トータルコーディネートして外出すれば気分も明るく、足取りも軽くなるはずだ。これが脳の若さを保つのに、役立たないわけがないだろう。 ■気がつけば私自身もこの秘訣を実践していた 医師として高齢者施設に入所する人を見ていても、それは実感する。施設は共同生活の場でもあるので、食堂などの共同フロアに行けば、ほかの入所者と顔を合わせる。ある女性は装飾品が大好きで、毎日共同フロアに出てくるときは必ず異なる装飾品を身に着けてきた。それを自慢したかったのだろうし、そのように着飾った自分を認めてもらいたかったのだ。施設という多くの人が入所する場とはいえ、慣れ親しんでしまうとなかなかそこまでできないはずだが、それがその女性の生きがいであり、健康を保つ秘訣だったように思う。 私自身も気づかぬうちにこの秘訣を実践していた。ただし、くたくたのズボンははかない、ワイシャツは一日で取り替える、ネクタイの緩みは許さないなどということは、私にとっては身だしなみの範疇であり、オシャレというほどのものではない。 私は若いころから学会などで海外に出張する機会が多かったため、身の回りのことは自分でする習慣ができている。毎日、背広に合ったワイシャツとネクタイを自分で選ぶという生活をしており、妻に選んでもらったことはない。 毎朝起きると、今日はどの服にしようかと考えるのが楽しみだ。服が決まれば、後は全身のバランスを考え、シャツ、ネクタイ、カフスボタンや時計などの小物類を選ぶ。 鏡の中でトータルコーディネートが完成すると、背筋がシャンとする。この習慣により脳も活性化され、若さを保つにも役立っていると思う。 ■自分に似合うもの、自分の好きな服を身に着けよう 私の好みは緑と茶で、その色の衣類を身に着けることが多い。とくに緑が好きだ。日本人は、なぜか紺やグレーの背広を着ている人が多い気がする。その理由は、みんなと同じ色を着て、なるべく目立たないようにという発想からではないだろうか。こんな現象は日本でしかみられない。日本には、自己に目覚めていない人が多いのではないだろうかと思ってしまう。あるいは、自分の好きな色を着ることを恥ずかしいと思っているのか、自分に似合う色がわからないのか……。 他人に不快感を与えない限り、もっと自由に自己表現し、自分の好きな色の服を堂々と身に着ければいいのに、と思うのである。私は自分の好きな色の服、自分に似合うだろうと思う服を着る。今でもときどきは行きつけの仕立て屋さんを訪れ、生地から選んで自分の好きな服を作ることを楽しみにしている。昔に比べればずいぶん減ったが……。 洋服はたくさん持っている。そろそろ少しずつ整理して、着ないものは処分していかなければ……とも考えている。でも、やはり服が好きだから、新しいものも欲しくなってしまうんだよな。オシャレも私が元気でいる秘訣の一つだ。
※『90歳現役医師が実践する ほったらかし快老術』(朝日新書)から一部抜粋 ≪著者プロフィール≫ 折茂肇(おりも・はじめ) 公益財団法人骨粗鬆症財団理事長、東京都健康長寿医療センター名誉院長。1935年1月生まれ。東京大学医学部卒業後、86年東大医学部老年病学教室教授に就任。老年医学、とくにカルシウム代謝や骨粗鬆症を専門に研究と教育に携わり、日本老年医学会理事長(95~2001年)も務めた。東大退官後は、東京都老人医療センター院長や健康科学大学学長を務め、現在は医師として高齢者施設に週4日勤務する。
折茂肇