映画「朽ちないサクラ」主演・杉咲花さん×原作・柚月裕子さん対談 苦しくても、踏み出す勇気はとても必要
「孤狼の血」シリーズなどの警察ミステリーを数多く手掛ける作家・柚月裕子さん原作の『朽ちないサクラ』(徳間文庫)が杉咲花さん主演で映画化され、6月21日から公開されます。親友の変死事件の謎を独自に調査する中で、事件の真相と公安警察の存在に迫っていく本作で、県警の広報職員・森口泉を演じた杉咲さんと、原作者の柚月さんにお話を聞きました。
あらすじ
たび重なるストーカー被害を受けていた女子大生が殺害された。女子大生からの被害届の受理を先延ばしにした警察が、その間に慰安旅行に行っていたことが地元新聞のスクープ記事で明らかになる。県警広報広聴課の森口泉(杉咲花)は、親友の新聞記者・津村千佳が記事にしたのではないかと疑うが、身の潔白を証明しようとした千佳は一週間後に変死体で発見される。後悔の念に突き動かされた泉は、捜査する立場にないにもかかわらず、千佳を殺した犯人を自らの手で捕まえることを誓うが……。
泉は「一気に何かが着火する人」
――柚月さんの原作をお読みになった感想を教えてください。 杉咲花(以下、杉咲):一人の女性が公安の闇に立ち向かっていくという壮大なストーリーの中で、人の心の機微が静かに描かれている作品という印象を受けました。泉は大切な人を傷つけて、大きな失敗を招いてしまいます。そのことに対して自分なりの形でなんとか責任を取ろうとする姿を、私は見捨ててはいけないと感じました。人が他者を見つめる「まなざし」について考えさせられるような物語だなと。 ――柚月さんは杉咲さんたちの演技をどうご覧になりましたか。 柚月裕子(以下、柚月):この小説を映像化するのはなかなか難しいんじゃないかなと思っていたので、役者の方のお名前を見た時は「みなさんがどのように演じてくださるんだろう」と、とてもワクワクしました。完成した作品を拝見して「すごい」と感じました。 ――感情はあまり表に出さないけれど、胸に秘めた思いをもって事件の真相を知ろうとする泉をどのように深めていきましたか? 杉咲:まず原作を読み込みました。私は泉のなかの軸として、怒りや悲しみに敏感で、人の死や事件などの出来事に触れた時、一気に何かが着火するような人なのではないかなと感じて。泉が持って生まれた本質的なものが、次々と起こる事象によってあぶり出されていく物語なのだと。