【とっておきメモ】たった9頭から…ウィルソンテソーロが勝ち取った格別1勝/JBCクラシック
<とっておきメモ> <JBCクラシック>◇4日=佐賀◇Jpn1◇ダート2000メートル◇3歳上◇出走11頭◇1着賞金1億円 たった9頭から、ビッグタイトルに手が届いた。 ウィルソンテソーロ(牡5、小手川)がJBCクラシックで悲願のJpn1初制覇を果たした。生まれ故郷はリョーケンファーム。オーナーの了徳寺健二氏が私財を投じて18年、北海道日高町に「テソーロ軍団」の生産拠点を構えた。元々牧場だった土地ではなく、一から草木を整備。今では全12面、約100ヘクタール(東京ドーム約21個分)の広大な放牧地を武器に、50頭以上の繁殖牝馬を有する。 19年生まれのウィルソンテソーロはその1期生にあたる。中央競馬に登録された同期は9頭。ウィルソンテソーロの母チェストケローズは、同馬の父で名種牡馬アンクルモーの血にほれた了徳寺オーナーが、米国のセリで購入した1頭。オーナー自ら配合を考え、まだ産駒デビュー前のキタサンブラックがつけられた。 同ファームのチームリーダー、土田陽介さんは振り返る。 「1歳夏の時、この馬は走りそうだなと思って写真を撮ったんです。きれいな馬で頭がよくて本当に優等生。他の馬もいつもウィルソンについていっていました。当時からスタッフ全員がウィルソンはいい馬だと言っていましたね」 道のりは決して平たんではなかった。21年8月に新潟芝1800メートルでデビュー。1着はイクイノックス、3着はサークルオブライフとG1馬が名を連ねた一戦で6着。その後骨折が判明し、左前脚には今もボルトが残る。芝で3戦未勝利の後、ダート転向初戦で大差勝ち。そのまま4連勝でオープン入り。地方重賞を3勝後、G1で2着3回。何度も涙をのんだ。 夢を紡いだ。母チェストケローズはウィルソンテソーロを出産後、蹄葉炎で息を引き取った。残った産駒は1頭のみ。夢にかけたオーナー、それをつないだ生産者、厩舎スタッフ、そして亡き母の思いを乗せ-。佐賀でつかんだ悲願の1勝は、格別に違いない。【桑原幹久】