フリーランスの人と発注事業者とのトラブル 最も多いものは?…フリーランス・事業者間取引適正化法施行
労災保険に特別加入
仕事中に起きた事故などでけがや病気をした時の備えも欠かせない。新法の施行に合わせ、すべてのフリーランスが11月から、労災保険に、保険料を自己負担すれば特別加入できるようになった。従来は、加入できる業種が建設業の一人親方などに限られていたが、厚労省が省令を改正した。 これに先立ち、日本労働組合総連合会(連合)は、新たな対象者の受け皿となる特別加入団体「連合フリーランス労災保険センター」を設立した。希望者は同センターを通じ、国に保険料を納めると、無料でけがや病気の治療を受けられ、働けない間の休業補償などを受け取れる。 連合は、新たに対象となるのは200万人ほどとみている。春田雄一・総合運動推進局長は「加入できるようになったことを知らない人も多い。もしもに備えて、できるだけ入っておいてほしい」と呼びかけている。
実態は「労働者」偽装横行…指揮命令あり 有休・残業代はなし
新法に対しては、審議した衆議院内閣委員会で18項目、参議院内閣委員会で19項目の付帯決議が付いた。施行にあたり、フリーランスで働く人の安全や健康などへの配慮を促す内容だが、特に、実態は雇用される労働者に近いのにフリーランスとして働く「偽装フリーランス問題」への対応が求められている。 フリーランスという働き方は本来、企業と業務委託契約を結び、発注された仕事を行うもので、仕事の進め方に自由な裁量がある。一方、偽装フリーランスは、労働者と同じように、企業の指揮命令を受けて働くにもかかわらず、有給休暇や残業代の対象外で、簡単に契約を切られてしまうなど、労働法令の保護を受けられない点で大きな問題がある。 宅配会社と3か月ごとの業務委託契約で30年近く働いてきた東京都内の男性(75)は今年1月、契約を打ち切られた。ハローワークから「会社に雇われている」と認められず、会社員らが対象となる雇用保険の失業給付を今も受け取れていないという。 全国一般三多摩労働組合(東京)の朝倉玲子書記長は「男性は会社に毎日出勤し、配達中の位置情報も機器で管理されていた」として、実態は「労働者」だったと指摘。「会社が社会保険料の負担などを免れる手段として偽装フリーランスが広まっている」と語り、国が問題の解消を図るよう求めている。(2024年11月19日付の読売新聞朝刊に掲載された記事です)