「吃音は意識しなければ治る」とタブー視され…「注文に時間がかかるカフェ」発起人・奥村安莉沙が歩んできたいばらの道
■語学留学先のオーストラリアで吃音治療 ── しばらくして介護職を辞め、オーストラリアに留学されています。その事故がきっかけだったのでしょうか? 奥村さん:いえ、事故とは関係なく語学留学へ行くことは決めていました。当時おつき合いしていた彼…今の夫がオーストラリア人ということもあって、英語を勉強しに行きたいと。ただ、オーストラリアに行ってみてわかったのですが、私は英語で話すほうが吃音がもっと重かったんです。そこで彼が「病院へ行けばいいんじゃない?」と言ったんですね。実は日本で受けた治療法が自分に合うとは思えなかった過去があって悩んだのですが、そのときに事故のことを思い出して、「また必要なときに声が出なくてつらい思いをするなら病院へ行ったほうがいいかもしれない」と決意するあと押しになったというのはあります。
── オーストラリアは吃音治療が進んでいるのですか?他の国や日本ではどうでしょうか。 奥村さん:オーストラリアは吃音研究がさかんで、対処療法がメインです。吃音の原因を根本的に治療するということではなくて、発話のスキルを磨いて楽に話せるような治療でした。アメリカでは脳の神経に働きかける薬を研究していますし、国によって吃音に対するスタンスが違うので、一概にどこが進んでいるとは言えないのですが。 日本ですと吃音を治すというよりは「受け入れる」という状況だと思います。吃音を受け入れるためにどうすればいいか、という方向ですね。もちろん、幼少期に吃音があっても、自然に治る方はいます。
── 本人が吃音を「受け入れる」なかで、周囲の人間がどんな支えや理解をすればよいのかアドバイスをお願いします。 奥村さん:吃音が出ても変な目で見ないでほしいです。普通に接してくれたら嬉しいですし、もし身近に吃音の方がいらっしゃったら、その人が何をしてほしいかを聞いて、寄り添ってほしいです。人によって吃音の症状や希望は違うので。 ── いまお話ししていても、奥村さんに吃音があるとはわかりません。苦手だとお聞きした“あ行”もスムーズですし。治療にはどのくらい時間がかかったのでしょうか?英語で治療したのでしょうか?