「革靴」は嗜好品になりつつある…いま靴業界で起きている「意外な変化」
革靴は嗜好品になりつつある
ーーオーダー靴を作る面白さがもっと伝わると靴業界もかなり変わる気がします。 諏訪部:最近のオーダー傾向を見ていると、明るくて組み合わせしやすそうな靴が増えている気がします。好きな色や形の靴を履ける環境になってきたのかなとも想像します。 みやび:職場での服装規定がゆるくなっているのは大きいと思います。それと革靴が嗜好品になりつつあるのかもしれませんね。スニーカーよりも長く履けますし。一方で、靴業界全体としてはかなり厳しいとも聞きます。 諏訪部:そうですね。原料価格が上がったり、エネルギーコストも上がっているので、国内で製造を依頼していた工場が閉鎖したとかって話はよく聞きます。国内での靴作りが難しくなっているのは肌で感じています。 みやび:靴作りって分業なので、流れ作業の中でここの作業をできる人がいないので誰かいませんか? という求人をけっこう目にするんですけど。受けられる職人さんが減ってきている印象があります。 諏訪部:世界全体でみると人口は増えているので、靴の需要は増えていて、必要とされています。これまで日本は大量生産、大量消費で進んできましたが、これからは環境負荷のことも考えなければいけないなと思います。私たちも国内でしっかり作る体制ができればなと思ってやっているところもありますし、いい意味で日本の靴が今以上に世界に旅立てればと思っています。 みやび:私も『靴の向くまま』を描いたからこそ、佐賀の友人の工房に行って靴作りをしてみたり、いろいろな方と出会いご縁を広げていただきました。おかげで市販の靴もより合うものを選べるようになりましたし、本当に描いてよかったと思います。 ーー本日はありがとうございました。 (取材・文/高畠正人) みやびあきの 福岡県生まれ。マンガ家&イラストレーター。『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)でデビュー。代表作に『はぢがーる』、『おにまん』、『なでしこドレミソラ』、『珈琲をしづかに』など。現在『靴の向くまま』が4巻まで発売中。 AYAME:諏訪部梓 学生時代はロボット工学を専攻。10年以上ITコンサルタントとして経験を積んだのち、2019年にオーダーメイド3Dシューズ菖蒲|AYAMEを設立。最先端の3Dプリント技術と靴職人の匠の技を融合したフルオーダー靴作りをスタート。修理付きサブスクなど新しい靴の利用法も提案している。 AYAME:島倉和也 AYAMEの靴デザイン、木型設計、店舗運営の責任者。3Dで木型を設計する方式を開発し、これまでに1000足以上のオーダー靴を制作。 *** 『靴の向くまま』みやびあきの 【4巻まで絶賛発売中!】 靴職人だった亡き母が遺した工房を継いだ結彩。“履き主がいい場所にいけますように”とおまじないをかけながら作る結彩の靴は、誰かの一歩をやさしく包んでいく。靴への愛着が湧くだけじゃなく、思わずオーダー靴を作りたくなる靴職人の物語。
高畠 正人