中村歌六 『熊谷陣屋』白毫弥陀六「義太夫狂言の爺役には力が要るんですよ」【ぴあアプリ「ゆけ!ゆけ!歌舞伎“深ボリ”隊!!」特集より】
毎月歌舞伎座公演で上演される演目のなかから、気になる場面やせりふ、キャラクター、衣装などをピックアップ。客席からは知る事のできないあれこれを、実際に演じる役者に直撃質問! これを読めばきっと生の舞台を体感したくなるはず。 さぁ、めくるめく歌舞伎の世界へようこそ。(「ぴあ」アプリ&WEB「ゆけ!ゆけ!歌舞伎“深ボリ”隊!!」今月の歌舞伎座、あの人に直撃!! 特集より転載) 【全ての写真】中村歌六さんインタビューカット、舞台写真ほか 壇ノ浦の戦いで源義経に敗れた平知盛、一ノ谷の戦いで熊谷直実に討たれた平敦盛。源氏に敗れた平家方の武将たちが実は生きていたら? 人形浄瑠璃や歌舞伎の中の平家物語は実に自由で大胆な設定ばかり。義太夫狂言の傑作、超重量級の時代物『熊谷陣屋』でも、「実は」という設定が物語を思わぬ方向へと展開させていく。 <あらすじ> 源氏の武将熊谷直実の陣屋には「一枝を伐らば一指を剪るべし」と武蔵坊弁慶によって書かれた制札が立っている。熊谷は妻の相模に、息子小次郎の活躍と平敦盛を討ったことを明かす。そこへ恩義のある敦盛の母藤の方が姿を現し、熊谷をなじる。やがて源義経による敦盛の首実検が行われ……。 何度見てもそのたびに苦しくなる。そして無常観に襲われる。熊谷と相模は何のために十六年間小次郎をいつくしみ育ててきたのだろう。またこのとき人生の絶頂期にあったのが義経。熊谷に冷徹な命を下していた彼についても、この後の運命を思うとやるせない。そんな熊谷と義経、熊谷の息子小次郎のドラマに加え、もうひとつ、白毫弥陀六と義経、平敦盛のドラマがこの『熊谷陣屋』の後半で繰り広げられる。 石屋のおやじ・弥陀六。だがどう見てもただの好々爺ではない。今月の深ボリ隊はこの弥陀六をロックオン。「壽初春大歌舞伎」の夜の部『熊谷陣屋』でこの弥陀六を勤めるのは中村歌六さんだ。なんと今回で11回目となる。 なぜ弥陀六は梶原景高を討ったのか。義経と弥陀六との間でどんな思いが交わされたのか。稽古が始まる前のある日、歌六さんを直撃した。