働きながら本を読むのは贅沢? いつから読書は「労働の邪魔」になったのか
社会を変えるために上司世代ができること
拙著を通してこう提言したところ、たくさんの感想やご意見をいただきました。興味深いのは、世代によって、感想の色合いに差があることです。 若年層は、「半身」に賛同してくださる方が多数派。すでに実践している方も多くいます。また、30代以上の方々からも、「本が読めないくらい疲れていたと気づいた」という声が多数寄せられました。若い世代を中心に、新しい生き方が徐々に浸透するのでは、と予測しています。 一方、40~50代からは賛成の声も届いたものの、「働きながら本を読むなんてそもそも贅沢では?」といった声もちらほら。社会が変わっていくには、この「上司世代」の意識と行動が変わることも大事な鍵となります。 上司の立場にいる方ができることは、多々あります。例えば部下を評価する際、「時間」を重視しすぎないことです。 働き方改革以前の日本は、「徹夜で頑張る」といった行動が過大に評価されました。「一生懸命」「熱心」といった指標も、同じく重きを置かれてきました。 しかし長時間働かなくとも、ことさらに熱心でなくとも成果があがっているなら、その点こそ評価されるべきです。その価値観を持つ上司が増え、職場が変わることが望まれます。 働き方改革は現時点で、「思ったよりも進んでいない」という印象を私は持っています。コロナ禍で一時期増えたリモートワークも、コロナが落ち着けば元通り、という職場が多数あります。根づいているのは都市部の企業やIT系など、限られた業種にとどまっています。 この停滞の原因も、世代差にあるのではないかと思います。若年層が働き方改革を「必要不可欠」と捉えるのに対し、決定権を持つ上司世代は、さほど必要性を実感していないのかもしれません。 この差は、世代ごとの「共働き率」の差とも言えます。20代や30代の働き手は多くが共働きで、夫婦双方が仕事と家事育児に関わっています。こうした家庭では、就業時間の短縮やリモート活用は、ライフラインに等しい重要事項となります。対して50代は、夫が働き、妻が家事育児をする家庭が多いため、さほど切迫感がないのです。 海外でも、共働き家庭が多くを占める国は勤務時間が短めです。私は10数年前、大学生時代に英国でホームステイをしていましたが、大企業勤務のお父さんの帰宅時間はいつも17時。たまに18時近くになるだけで、お母さんに怒られていました(笑)。 また海外赴任中の友人によると、育児中の社員は誰でも「子どものお迎えの時間に帰る」のが当たり前だそうです。日本では、母親が時短勤務をして迎えに行く形が主流ですね。ここにも違いを感じさせられます。 日本社会は女性が仕事・家事・育児に「全身コミット」を求められやすく、こうした女性の疲弊は著しいものですが、これからは夫婦双方が仕事に半身で関わり、家事育児も半身ずつ、二人で関わる家庭が増えていくことを期待しています。