SNSに適応できず、しんどくなる子もーー小・中・高校生ががんばりすぎて燃え尽きる前の「SOS発信」教育 #今つらいあなたへ
「子どもたちを守らなければ」
藤田さんが中学生と話して感じるのは、「人との距離感」に悩む子どもが多いこと。その大きな原因の一つがSNSだ。 「即レスしなければいけないとか、グループLINEにどう入ったらいいのか分からないとか。見てるだけでしんどくなった、酔ったようになると言う子もいます。仲間への同調圧力が強い分、がんばりすぎて燃え尽きている子が多いと思います。孤立したくないという気持ちが強いのです」 藤田さんには悔しいと思うデータがあった。全国的に子どもたちの自殺が増加していて、しかも半数以上の自殺背景が「不明」だったことだ。 「メンタルの不調は誰にも起こりえる自然なことで、自分が無力だと思ってほしくなかったのです。そのためには、他者に対して自らを発信する教育が必要だと感じていました。2018年に和歌山県の自殺率が全国ワーストになったのですが、子どもたちにも動揺が伝わります。子どもたち本来の力を引き出し、守らなければと思いました」 SOS発信プロジェクトでは、自分と友だちをハリネズミに例えて、左右の手の指を向き合わせ、日頃の距離感を体感する場面がある。両手の指が近すぎるとお互いのトゲが刺さってしまうが、遠すぎると少し寂しい。近すぎてしんどくなったら離れても大丈夫、寂しくなったらまたそっと近づいてもいい。
「友だちといつも一緒でトゲの刺さった関係でなくてもいい、一人でも心地よいという自分の感覚を信じてほしい。思春期の生きづらさを少しでも減らすことにつながればと願って伝えます。安全な距離感を普段から練習、体感することは、よく知らない人には心を開きすぎないなど危険から身を守る助けにもなります」
コミュニケーション能力を引き出し、孤立を防ぐ
SOS発信プロジェクトには、コミュニケーション能力を引き出し、孤立を防ぐ側面もある。 出嶋さんと同級生の久保田陽央(はるひさ)さんは、もともと友だちにあまり頼るタイプではなかったという。しかしプロジェクト体験後、変わった。 「悩みを人に打ち明けることはしなかったですが、友だちを頼っていいと知って、勉強を教えてもらったりするようになりました。小学6年のときに発症した起立性調節障害という病気で朝起きることができず、遅刻が多かったり、休みがちになったりしたので、勉強を教えてもらえることは助けになりました。それがきっかけになってたくさんの人とオープンに話せるようになったり、人と競い合うことも楽しくなったりして、勉強が苦ではなくなり、気づけば成績も上がっていたのは大きかったかなと思います」