SNSに適応できず、しんどくなる子もーー小・中・高校生ががんばりすぎて燃え尽きる前の「SOS発信」教育 #今つらいあなたへ
出嶋さんは、モヤモヤしてきたら歌を歌ったり得意のダンスをすることで解消するという。それに何度も救われた。「SOS発信プロジェクトを小学6年ぐらいのときに受けていたらもっと楽だったかもしれない」と振り返る。
「互いを知ることが友だちになる第一歩」
藤田さんも、もう少し低い年齢からのSOS発信教育の必要性を考えていた。そこで、和歌山大学教育学部附属小学校5年生向けに小学生版の授業を実施。それをきっかけに、紀の川市立中貴志小学校の谷口校長から「特別授業をしてほしい」という依頼が舞い込む。谷口校長はこう話す。 「私たちが子どものときとくらべると、友だちをつくるのが苦手になっている気がします。地元の公立中学校にはいくつかの小学校から児童が集まってきます。初めて出会う子となかなか友だちになれなくて、学校になじめない子がいるんです」
藤田さんは依頼を快諾し、昨年特別授業を実施。今年も11月に、5年生を対象に授業を行った。 「よりよい人間関係づくり」というテーマがスライドで映し出された教室で、冒頭、藤田さんが場の雰囲気を和らげる話をする。 「今日はこころの話をします。一人一人のどんな意見や考えでもOK、人とは違う答えでも大丈夫」 そうして始まったのが、自分の大切なものを言うゲーム。ボールを「自分の好きなもののたまご」に見立てて、「大事にしてね」と隣の人に渡す。例えばケーキが好きならば「これはケーキのたまごです。大事にしてね、よしよし」と言ってボールを渡す。担任の先生も参加して「これはラーメンのたまごです。大事にしてね」と輪に加わり、笑顔で子どもたちをリラックスさせていく。
クラス全員がボールを回し終わったところで、藤田さんから「お友だちのたまごをきいて、やっぱりと思ったり、知らなかったとか発見はなかった?」という質問が投げかけられる。手が挙がり「Aさん(の好きなもの)が音楽と知ってちょっと意外だった」などと、いつも顔を合わせていても知らなかったことを答えていく。互いの話を聞き、知ることが友だちになる第一歩だということが伝えられる。 さらに藤田さんは子どもたちにこんなふうに問いかけた。 「自分の心の声を聞いたことある?」「友だちの心の声を聞くためにどんなことをしていますか?」 「もし友だちの表情を見て、しんどそうやなと思ったら、『大丈夫?』って聞いてみて。自分自身がつらいときには、『しんどいよ』と伝えて大丈夫です。校長先生も担任の先生もスクールカウンセラーさんも友だちもそばにいてくれる。助けたいと思ってくれている。でもあなたが困っていることに気づかれないことがあります。あなたにとって自分が困っているということを伝えたい人、わかってもらいたい『ハンドクリームのような人』は誰かな?」