なぜ西武”恐怖の8番”木村文紀の逆転満塁弾が炸裂したのか?
確信に近いものがあった。次も必ずストレートが来る。そう思えた瞬間、右打席で構える埼玉西武ライオンズの木村文紀の脳裏から雑念が消え去り、逆に集中力が増してきた。 「初球の真っ直ぐが(指に)引っかかってボールになっていた。なので、何も考えていなかったというか、来た球に対して強く振っていこうと心がけて、割り切ってスイングできました」 メットライフドームで26日に行われた福岡ソフトバンクホークスとの4回戦。3-4とリードを許した8回裏に迎えた二死満塁の場面で、ソフトバンクの3番手・岩嵜翔が投じた2球目、キャッチャーの構えよりもやや高く浮いた外角高めの149kmのストレートを木村が完璧に打ち返した。 快音を残した打球が美しい放物線を描きながら、バックスクリーンへと着弾する。試合後のヒーローインタビューで、はにかみながら「打った瞬間に入ると思いました」と自画自賛した逆転満塁ホームランは、王者・西武を3連敗のピンチから救う起死回生の一撃となった。 初回、3回と2打席連続アーチを放った4番・山川穂高が、ボール球に手を出さずに一塁へ歩いてチャンスの足がかりを作った。続く外崎修汰、中村剛也がともにレフト前へ運ぶ。一死満塁と攻め立てたところで、辻発彦監督は三塁に進んだ山川に代えて俊足の山野辺翔を代走に送った。 7番のDH栗山巧に最低でも外野フライを託したベンチの期待は、一塁ゴロで山野辺が封殺された瞬間に萎みかける。打席に入った8番の木村の成績は、この時点で20打数3安打の打率.150。本塁打ゼロ。この試合でも四球で歩いた後は、空振り三振とショートゴロに倒れていた。 それでも、ベンチに代打を送る気配はまったくない。2006年の高校生ドラフト1巡目で埼玉栄から入団した、9月で32歳になる外野手に生じている変化を、辻監督は期待を込めてこう言及していた。 「キャンプのときから、昨年までの木村とは全然違います。バッティングが非常によくなってきているので、期待してもらってもいいと思っています」