なぜ西武”恐怖の8番”木村文紀の逆転満塁弾が炸裂したのか?
マックス148kmを誇る本格派右腕として、木村はプロの世界に挑んだ。しかし、右ひじの疲労骨折や腰痛などに見舞われ、期待された結果を出せないまま、6年目だった2012年9月に外野手へコンバートされている。高校時代に通算33本塁打を放った長打力と、50メートルを5秒6で走破する俊足を含めた身体能力の高さを見込まれて、第2の野球人生のスタートを切った。 目標として掲げたのは、同じくプロ入り後に投手から外野手へ転向した糸井嘉男(阪神タイガース)。ハイレベルにある走攻守を動画などで研究しながら、昨シーズンにはライトのレギュラーとして130試合に出場。規定打席にわずか2打席足りなかったものの、キャリアハイとなる441打席を記録し、2014年並ぶ自己最多の10本塁打を放った。それでも納得できなかった、と木村は振り返る。 「自分ではホームランバッターだと思っていないので。ヒットの延長でたまたまいい角度で打球が上がってくれたときに、(スタンドに)入ってくれただけなんですけど。ただ、去年も含めて、いままでは来たボールに対して力がほどけてしまう部分がけっこうあったんですね。今年はキャンプから『来た球を強く振る』ことをずっとやってきたことが、いまにつながっているのかな、と思っています」 不満の矛先は昨シーズンで言えば.220に終わった打率と、38にとどまった打点の少なさ、要はチャンスで打てないことにあった。 それでも辻監督は「あとは気持ちだけだと思っていた」と木村の潜在能力の高さに期待をかけ、バッティングコーチ陣を介して、メンタル面の強化を図ってきた。 「打席で消極的にならないように。今年は来た球をしっかりと、強く打てるようになっている。要するにインパクトの強さが昨年までとは全然違う。タイミングを上手く取れるようになったし、ボール球をしっかりと見逃して次のストライクを打ち返した点を含めて、すべてにおいて成長している。ただ、ホームランまでは予測できませんでした。まあ、これ以上はない結果になりましたよね」