なぜV3狙う西武自慢の”山賊打線”は沈黙しているのか…緊急打線改造の可能性も
スコアボードに「0」が並び、対照的に残塁の山が築かれていく。5回までに毎回の10残塁。2回と4回には満塁のチャンスを、特に後者では無死で迎えてもホームが遠い。自慢の「山賊打線」が湿ったまま、昨シーズンのパ・リーグ王者・埼玉西武ライオンズが開幕カードを負け越しで終えた。 メットライフドームで21日に行われた、北海道日本ハムファイターズとの3回戦。西武の辻発彦監督をして「あの回で何点か取っていれば、こんな大味な試合にはならなかったと思う」と嘆かせ、最終的には2-12の大敗へとつながった分岐点は、2点のビハインドで迎えた4回裏の攻撃だった。 先頭の6番・中村剛也が今シーズン初安打をセンター前へ放ち、7番・栗山巧が右中間を破る二塁打で続く。8番・木村文紀が四球を選んだ場面で、日本ハムの木田優夫投手コーチがたまらずマウンドへ向かう。檄を飛ばされた先発の杉浦稔大が、9番・金子侑司をまずショートフライに打ち取った。 左打席に入った1番の新外国人選手、コーリー・スパンジェンバーグは、二死満塁で迎えた2回裏の第2打席にアウトにこそなったものの、ライトポール際へあわやの大飛球を放っていた。視聴しているファンの大きな期待が込められた打席は、まさかの見送り三振とともにため息へと変わった。 「ああいうことがなかったからね。やっぱり、それだけいいピッチャーが投げると……」 結果もさることながら、辻監督の表情を曇らせたのはスパンジェンバーグの打席内容にあった。ワンバウンドになった2球目のフォークボールを空振りするなど、変化球で瞬く間に追い込まれ、外角への力のあるストレートを続けて見せられた直後の6球目だった。インコースに落とされた127キロのフォークボールをまるで金縛りにあったかのように見送り、三振を告げるコールに天を仰いだ。
辻監督が言及した「ああいうこと」とは、変化球をストライクからボールに落とす攻め方となる。6回裏の第4打席では、3番手左腕・堀瑞輝の前に再び見送りで3球三振。2点を返した8回裏には5番手・金子弌大がカウント1-2から外角低めに投じた、ボール気味のカーブにバットが空を切った。 「そこへ打たなきゃとか、打ちたいとか、いろいろな気持ちがあるんだろうけど……やっぱりボール球を振らなければ、いいものをもっているわけだからね」 開幕戦の第2打席でセンター前へ来日初安打を放ち、4番・山川穂高の内野安打で先制のホームを踏んでから12打席連続で凡退。そのうち三振が実に8個を数え、打率が.071まで下がった29歳の元メジャーリーガーをかばうように、辻監督は「まだ3試合です」と言葉を紡いだ。 新型コロナウイルスによる約3カ月遅れでの開幕決定を受けて、今月に入ってから行われた練習試合で、辻監督はスパンジェンバーグを主に8番で起用してきた。しかし、8勝1敗1分けと12球団で最高勝率を残した練習試合で、スパンジェンバーグは34打数17安打の打率.500とセパ全選手のなかで最高の数字をマーク。ホームランも同じく3位タイの4本を放つ大暴れを演じてみせた。 対照的にトップバッターで起用してきた昨シーズンの盗塁王、金子のバットが湿り気味だったこともあって、練習試合の最後の2戦で辻監督はスパンジェンバーグを1番に抜擢。MLBのシンシナティ・レッズへFA移籍した秋山翔吾に代わる切り込み隊長を新外国人選手に託し、2シーズン連続でリーグの最多得点と最高打率をマークしてきた「山賊打線」のリニューアルを図った。 しかし、弱点を即座に見抜かれるのもプロの世界の掟となる。アウトコースの、特にボールになる変化球への対応に難があることが練習試合でわかったスパンジェンバーグは早くも袋小路に入り込み、不振の連鎖は練習試合で.394の打率を残した新キャプテン、源田壮亮にもつながる。