「塩分を控えれば健康」は大ウソだった...儲け主義の「デタラメ医師」に殺される人が陥りがちなヤバい思考
■下手に手術をして苦しむより、何もしないほうがよっぽどいい 最後にがん検診について触れておきます。がん検診を受けるべきかどうかは、個人の「哲学」によるでしょう。受けたいなら受ければいいと思います。ただ、個人的には受けなくていいと思っています。がんは1センチメートルの大きさになるのに10年かかるといわれます。その10年の間に転移がなければ、転移しないがんの可能性が高く、その後もおそらく転移しません。逆に、最初の10年間で転移していれば、すでに手遅れです。がんの苦しみの大半は、手術や抗がん剤などの治療によるものですから、治療をしない決断もあっていいと思います。 特に80代になって外科手術をした場合、手術の負担に加え、4週間は入院することになります。その間に歩行訓練などで鍛えないと、体の機能が衰えて、通常の生活に戻れなくなるリスクが高い。下手に手術をして苦しむより、何もしないほうがよっぽどいいというわけです。 私が言いたいのは、立派な肩書を持っているからといって、医者の言いなりになるなということです。私は有名大学の教授たちとは真逆で、学生時代は遊んでばかりでしたが、医者になってからは40年間、勉強し続けてきました、だからこそ本当のことが言えます。ちなみに私は今も健康診断を受けず、“正常値”も気にせず、好きなものを食べ、好きなことをしてストレスなく生きています。 放っておくと血圧は220になるので、200を超えたら薬を飲んで170くらいに抑えますが、基本は運動をして改善に努めています。血糖値は毎朝測って300を超えたら薬を服用します。健康診断を受けない代わりに5年に一度は心臓ドックを受けます。このように世間の常識ではなく、自分の考えと体調をもとに管理しています。 ネットを駆使すれば、いくらでも自分で調べられる時代ですから、最近の統計データや論文で調べてみて、自分の頭で考えて判断しましょう。そして自分の哲学なり判断を理解してくれる主治医を探してください。肩書で医者を選ぶのではなく、エビデンスやデータを示して説明する医者を選ぶことが健康長寿への道に繋がります。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月18日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)など著書多数。 ----------
精神科医 和田 秀樹 構成=大島七々三 図版作成=大橋昭一