【チャンピオンズC】ウィルソンテソーロ95点 理想的「50―50」型 大谷翔平のような屈強な馬体
◇鈴木康弘氏「達眼」馬体診断 「50―50」のかっこよすぎる俺になった。鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第25回チャンピオンズC(12月1日、中京)ではウィルソンテソーロとレモンポップをトップ採点した。ウィルソンテソーロに達眼が捉えたのは前後肢のバランスと驚異的な進化。同レースの翌日に年間大賞などが発表される「新語・流行語大賞」のノミネート語になぞらえて馬体を解説する。 今年の「新語・流行語大賞」の候補となる30の言葉が発表されました。最有力候補は大谷翔平選手が達成した大リーグの新記録「50―50」。50本塁打、50盗塁を意味する野球用語ですが、馬体診断で「50―50」と言えば前後肢の比重を指しています。ダート馬の場合、前肢のボリュームが後肢より勝った体形が多く、「52―48」ぐらいの比重。中には、前肢にバランスが傾き過ぎた「55―45」の体形も見かけます。 前後肢が絶妙な均衡を維持する「50―50」は車に例えれば4WD。4輪全てが駆動するため2WD(前輪駆動や後輪駆動)よりパワーがあり、悪路でもスムーズに加速できる。競走馬も一緒です。それでいて4WDほど燃費(エネルギー効率)も悪くない。 チャンピオンズCには理想の「50―50」型が3頭います。ウィルソンテソーロとレモンポップ、セラフィックコール。中でも大谷翔平の肉体のように驚異的な進化を遂げたのがウィルソンテソーロです。 「ダート馬にしては全体に細手のつくり。もう少し筋肉量を増やしてほしい」。昨年のチャンピオンズC時にはこんな注文をつけました。ダート馬というよりも芝馬の体つきでした。それからわずか2カ月半で体つきが一変します。フェブラリーS時には「5歳になって肩や胸前の筋肉量が増え、細めだった首の筋肉がパワーアップしました」と評価した。さらに9カ月を経た今回。首の厚みがさらに増しています。傾斜のきつい立ち気味の肩には岩のように強固な筋肉を付けている。トモにも大きな飛節にふさわしい筋肉。前後肢のバランスを「50―50」で保ちながら、ダートの一流馬らしい屈強な馬体に進化したのです。 「やばい、かっこよすぎる俺」。今夏のパリパラリンピック(車いすテニス)で金メダルに輝いた小田凱人さんの優勝コメントが流行語大賞にノミネートされました。ウィルソンテソーロもかっこよすぎる馬体を誇示するように意気揚々と立っています。尾に力を入れて勇み気味ですが、四肢はしっかり大地をつかんでいる。目にも輝きがあります。 ソウル遠征帰りのJBCクラシックで交流Jpn1初制覇を飾ってから中3週のローテーション。レモンポップとは対照的に腹周りはスッキリしています。このままのかっこよすぎる「50―50」の体つきで本番に臨んでほしい。(NHK解説者) ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。