改憲発議、ダブル選は? 2019年の日本政治を展望する
春に統一地方選、夏に参院選を控える2019年。4月30日には天皇陛下が退位され、皇太子さまが翌5月1日に即位されます。そのほか10月には消費税引き上げなど重要な日程が予定されています。今年の日本政治について、政治学者の内山融・東京大学大学院教授に展望してもらいました。
◇ 2019年の日本政治は、参院選と憲法改正が焦点となる。この二つが絡み合いながら政局が進んでいくであろう。
●統一地方選と参院選
まず4月には統一地方選が予定されている。知事選挙、道府県議会議員選挙、政令指定都市の市長と議員の選挙が4月7日、それ以外の市区町村の首長と議員の選挙は4月21日に行われる。4月21日には衆院沖縄3区補選も行われ、与野党候補の一騎打ちとなる見込みである。これら一連の選挙は参院選の前哨戦としても位置づけられる。 加えて昨年末、大阪市を特別区に再編する「大阪都構想」についてあらためて民意を問いたいとして、松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長がそろって辞職する意向を示した。年明けに最終的な判断がなされるとのことであるが、もし2人が辞職した場合、統一地方選に合わせて知事と市長のダブル選が行われる。 自民党大阪府連は大阪都構想に反対しているし、維新の会と公明党の対立も深まっている。一方で、後述するように安倍政権が目指す憲法改正には維新の会との協力が重要になってくる。大阪の選挙が国政にどのように波及していくか、注目したい。 参院選は7月21日投開票(7月4日公示)との日程が有力である。情勢について予断は禁物であるが、野党共闘の成否が大きな要因となろう。2016年の参院選では32の一人区で野党候補の一本化がなされ、そのうち11区で野党側が勝利した。 本年の参院選でも野党共闘の動きは進んでいるものの、立憲民主党、国民民主党、共産党など各党間を調整するのは容易ではない。一人区で候補者を一本化する方針では合意しているが、具体的にどの候補者を立てるかについては各党の思惑が入り乱れている。二人区についても国民民主は一本化を呼びかける一方、立憲民主はすべての複数区に候補者を立てる方針である。野党共闘の成否はまだ見通せない。 一方、安倍内閣の支持率は昨年12月に少し下落したものの、今のところ40%台を維持している。この点から考えると、野党共闘の進み具合にもよるが、与党が大敗する事態にはなりにくいのではないか。 その一方で、与党側が憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席を維持できるかは不確かである。現在参院では、自民・公明の与党に、憲法改正に積極的な姿勢を示している日本維新の会やその他の無所属議員を加えると3分の2に達している。しかしその数を大きく超えているという状況ではない。しかも今回改選となるのは、与党が大勝した2013年の参院選で獲得した議席(※1)である。今度の参院選でそのときと同程度の勝利を収めるのは難しいと考えられるため、3分の2(※2)を割り込むおそれも大きい。この点は憲法改正と絡む問題である。また、衆院との同日選が検討されているとの説もある。 (※1)…2013年参院選で自民党は65議席、公明党は11議席を獲得した。 (※2)…参院定数6増の公選法改正によって、2019年参院選では総定数が245となり、過半数が123、3分の2ラインは164議席となる。