改憲発議、ダブル選は? 2019年の日本政治を展望する
●憲法改正
昨年8月に安倍首相は「党の改憲案を次の国会(筆者注:昨秋の臨時国会)に提出できるようとりまとめを加速すべき」と発言し、改憲案のとりまとめを急ぐ姿勢を見せた。同年10月に招集された臨時国会での所信表明演説でも安倍首相は、憲法改正について「国民と共に議論を深め、国会議員の責任を共に果たしていこう」と述べていた。 しかし、立憲民主党をはじめとした野党側の抵抗は強かった。出入国管理法(入管法)改正案をめぐる与野党対立が激しかったこともあり、野党側は憲法審査会の開催に応じず、与党が職権で衆院憲法審査会を開催した際も野党は欠席した。結局のところ臨時国会では、自民党が目標としていた改憲案の提示は行えず、投票環境改善のための国民投票法改正案の審議もできなかった。 自民党が提示しようとした改憲案とは下記の4項目である。第一は9条である。自衛隊を憲法に位置づけるため、同条の改正により自衛隊を明記することを目指している。9条改正についての自民党内の多数意見は、「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を規定した9条2項を維持し、新しい条文(「9条の2」)を新設して自衛隊を明記するという立場である。それに対し、戦力不保持と交戦権否認の規定を残しておくのは適当でないとして、9条2項を削除すべきという意見もある。 第二は緊急事態条項である。大地震などの災害の際に国会が機能しないおそれがあるため、憲法に緊急事態条項を設けることにより、国民の生命と財産を守るために内閣が政令を制定できるようにするというものである。 第三は参議院の「合区」解消である。これまで参議院の選挙区は都道府県単位であったが、1票の格差を是正するため、2016年から複数の県が「合区」として一つの選挙区となった。これに対して自民党内で批判が強いため、都道府県を選挙区の単位にできるように憲法改正を行うというものである。 第四は教育充実である。維新の会は教育無償化を憲法改正の柱と位置づけてきた。自民党は改憲への維新の会の賛同を取り付けるために、教育充実を改憲案に盛り込んだ。