改憲発議、ダブル選は? 2019年の日本政治を展望する
改憲論議とダブル選の可能性
ここで、憲法改正の手続をおさらいしておこう。改憲の発議は国会によって行われる。憲法改正の原案は、衆議院と参議院の憲法審査会で審議された後、本会議に付される。衆参両院それぞれの本会議で総議員の 3分の2以上の賛成で可決した場合、憲法改正の発議がなされることになる。その上で国民投票が行われる。国民投票は発議の日から60日以後180日以内に行われ、賛成多数となれば憲法改正が成立する。 安倍首相はこれまで「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と明言してきたこともあり、今年は本格的に改憲手続を進めるだろう。では、どのようなスケジュールが想定されるだろうか。 安倍首相にとって理想的なのは、おそらく、通常国会で改憲案の審議を進め、7月の参院選の前に国会での発議を行うことだろう。前述のとおり、参院選の結果によってはいわゆる改憲勢力が3分の2の議席を失う恐れがあるからである。また、10月に消費税率引き上げが予定されていることを考えると(特に後述のとおり衆院選とのダブル選が念頭にある場合には)、9月までに国民投票を実施したいのではないだろうか。 このスケジュールに影響を与える要因として考えられるのは、憲法審査会での審議状況と世論の反応である。 昨年と同様に改憲に対しては野党が強く抵抗するであろうが、その抵抗を押し切って憲法審査会での審議を進めることができ、またそれに対して世論もそれほど強く反発しないようであれば、6月に発議を行う可能性がある。この場合、最短では9月に国民投票が行われるかもしれない。 反対に、もし憲法審査会での審議が難航したり、与党の強硬な姿勢に世論の反発が強くなったりした場合には、参院選前の発議は見送られる可能性が高い。その場合には衆参ダブル選の公算が出てくる。一般的に衆参ダブル選は与党に有利となるため、ダブル選により3分の2の議席を維持する見込みに賭けるということである。 特に、野党共闘が進むようであれば、参院での議席減の可能性が高まるため、ダブル選へのインセンティブは高まる。衆院選は小選挙区を基本とするため、野党共闘は参院選に比べて困難になる。したがって、衆院選をぶつけることにより、参院選での野党共闘を牽制することができる。 衆院が解散されることになれば、消費税率引き上げや北方領土2島返還の是非を問うという形を取ることが予想される。また、衆院選については、参院とのダブル選ではなく、憲法改正国民投票とのダブル選になるという観測もある。